「日本人が日本株に投資したら日本円リスクを増やすだけ」橘玲が解説する〈よくできている投資信託〉とは?(橘 玲/文藝春秋 2024年7月号)

資産を守るため、もっとも有効な投資先とは? 橘玲氏が解説する。

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もっともシンプルな戦略は?

世界の株式市場は年率7%程度で拡大していくと期待できる。だとしたら、もっともシンプルな戦略は市場に上場するすべての銘柄に時価総額に応じて投資することだ。

投資業界の“不都合な事実”は、ファンドマネージャーが運用するアクティブファンドのパフォーマンスが、平均すれば、市場平均を一貫して下回っていることだ。

新1万円札 ©時事通信社

株式市場には機関投資家やヘッジファンド、トレーダーなどさまざまな参加者がいて、その取引を平均した指標が「株式インデックス」になる。この単純な前提から、すべての投資家のパフォーマンスの平均は、取引手数料や運用手数料のコスト分だけ、(コストを含まない)市場平均を下回ることになる。

このことは1970年代に数学的に証明されていて、ノーベル経済学賞の対象になり、それから半世紀以上、その正しさが証明され続けている。長期で見れば、市場の平均に投資する手数料率の低いインデックスファンドのパフォーマンスは、(数学の天才たちが集まった一部のヘッジファンドを除けば)それ以外のあらゆる金融商品や投資戦略を上回るのだ――詳しい理屈に興味があれば拙著『臆病者のための株入門』(文春新書)を読まれたい。