健康な老後に何より大事なタンパク質
セロトニンは精神を安定させるため、肉食はストレスの緩和にも役立ちます。
年を重ねるごとに筋肉はどんどん落ちていき、いくら筋トレで鍛えても、一度落ちた筋肉は簡単にはもとに戻りません。タンパク質は筋肉や臓器、骨格などをつくる材料にもなりますから、特に50代以降は意識的に摂取したほうがいいのです。
その他にもタンパク質は免疫機能を維持する物質の材料にもなっており、不足すると免疫機能がどんどん衰えていきます。風邪をこじらせて肺炎で亡くなる高齢者が多いのは、タンパク質が不足しているために免疫機能が弱っている可能性があるからです。
健康な老後を送るためには、アミノ酸を多く含むタンパク質を摂取することが何より大事ですが、そのための理想的な食べ物が、肉なのです。
ただし、うつ症状が出ている人は食欲が落ちるだけでなく、肉類をあまり受け付けなくなることがあります。うつ病の患者さんのなかには、「肉なんてムリ、あっさりしたものしか食べられない」という人も多いです。
しかし、そのために余計うつ症状が進んでしまうこともあるのです。ですから、うつ症状が出る前からしっかり肉類を摂っておいたほうがいいでしょう。それでも、やはり肉が苦手という人や、もうすでにうつ症状が出ていて肉を食べられないという人は、動物性タンパク質の豊富な牛乳や卵でも構いません。
ホルモンを活性化させる食品群
他にも、ホルモンを活性化させる食品はたくさんあります。
図表1に列記しますので、なるべく積極的に食べることをお勧めします。
食事の際には、食べる順番も大事です。
ポイントは、「タンパク質から食べる」ことです。
始めに炭水化物を摂ると、血糖値が大きく上がってインスリンが大量分泌されます。すると血糖値が乱高下するため、内臓に負担を与えて細胞の炎症を起こして老化を促進してしまうのです。
ですから、まずは肉や魚、大豆製品などのタンパク質から先に食べて、その後に野菜、そしてご飯やパン、最後にデザートという流れにすると、血糖値の上昇が穏やかになり、内臓への負担が少なくなります。
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。