始めてはみたが無理なときの秘策

発達障害ではないビジネスパーソンも、この作業興奮を活用してお仕事をされている方が多いそうです。ということは、「過集中」という特性のある私たちは、この作業興奮を活用することにより、他の人よりもものすごい力を発揮することができると思いませんか? 活用しない手はないですよね。

さて、作業興奮についてひとしきり語ったところで、私も今すぐタイマーをかけ、シンクの洗い物に着手したいと思います。

人は誰しもやる気がわかないときがあります。とりあえず5分だけやってみたら作業興奮により、やる気がわくことを前項でお伝えしましたが、それでもやはり、やる気がわかないことがあります。

とりあえず5分やってみて、全然エンジンがかからない場合、それは今やるべきではないことです。嫌々やってもいい成果は出ません。一旦やめてしまいましょう。私も気分が乗らないときは、散歩したりコーヒーを飲んだりして、一旦気持ちをリセットします。

ただし一旦リフレッシュしたり、日にちを変えて再チャレンジしたりしても、一向にやる気が出ないこともあるでしょう。それは、あなたには向いていないことなのかもしれません。思いきって手放してしまう勇気を持ちましょう。

ジグソーパズルの閃きのパーツがはまる瞬間
写真=iStock.com/tadamichi
※写真はイメージです

ときには思い切ってやめる勇気も大切

私はナレーションの講師の仕事もしています。プロのナレーターになりたいという人に教えているのですが、ときどきまったく練習しないでレッスンにやってくる人がいます。そういう人は、ただちに別の道を探したほうがいい、と私は思っています。本当にやりたいことなら、必ず練習するはずです。

中村郁著『発達障害・グレーゾーンかもしれない人の仕事術』(かんき出版)
中村郁著『発達障害・グレーゾーンかもしれない人の仕事術』(かんき出版)

人間ですから、気分の乗らないときはあるでしょう。でも、まったく練習しない、いつまで経っても気分が乗らないのなら、完全に向いていない、ということです。一向にやる気が起きないことは、自分には向いていないものとして思いきって手放してしまいましょう。やめる勇気も、ときには大切です。

自分が選んだ道だったとしても、軌道修正が必要になることがあります。無理矢理しがみつく必要はありません。一度きりの自分の人生です。あなたの人生はあなたが主役です。誰に何と言われようと構いません。

思いきって「やめる」という選択をすることもまた、あなたの毎日を改善させることに繋がります。

以上が、片付けが苦手すぎる私が実践する整理術です。発達特性のある人はもちろん、そうでない人にも参考になれば幸いです。

中村 郁(なかむら・いく)
ナレーター、声優

注意欠如・多動症(ADHD)、自閉スペクトラム症(ASD)併存の診断を受けた発達障害当事者。幼小時より過剰に集中しすぎてしまう「過集中」に悩まされる。この特性が災いし数々のアルバイトをクビになり「社会不適合者」の烙印を押されるが、偶然が重なりナレーター事務所に所属。もう絶対にクビになりたくないという強い想いから、発達障害を持ちながらも大きなミスをしないための数々のライフハックを生み出した。現在は、全国ネット番組のナレーションを多数務めつつ、発達障害の理解を広める執筆、講演活動を精力的に行う。著書『発達障害で「ぐちゃぐちゃな私」が最高に輝く方法』(秀和システム)。