子どもたちは「触れ方」をどう学ぶのか
エンタメの表面たるメジャー作で本当の性が描かれない。だが日本はそもそも文化的に人と人の物理的接触が少なく、挨拶がわりのキスやハグなどの習慣がない。街中や公共の場でカップルがスキンシップしている姿もまれで、せいぜい手を繋ぐのが社会的に許容されている程度だ。
じゃあ、子どもたちはどこでどうやって「他者に触れる」方法を学ぶんだろう。ふとそんな疑問が湧く。
先日、AbemaPrimeという番組にコメンテーター出演した折、痴漢の再犯を繰り返してしまい正常な社会生活が送れないことから「痴漢外来」なる精神科に通う男性と、痴漢の精神療法を研究する大学教授の話をうかがう機会があった。
痴漢はWHOの国際疾病分類にも記載されており、治療の必要な性依存症であるという世界共通の公式見解がある。すでに治療法は確立されており、治療による効果も統計で証明されている、という話だった。
それにしても日本の痴漢件数だけが世界的に異常な突出を見せているのだ。何がその原因なのか、社会的なものか民族的(?)な身体特性でもあるのか、と聞いたところ、その答えは「痴漢が犯罪行為に及ぶようになるのは、満員電車が圧倒的なトリガー(きっかけ)」だったのだ。
他者に日常的に触れる習慣がなく物理的距離を保つ日本。突然他者と密着する状況におかれた時にそれを悪用し、ましてや依存的に犯罪を繰り返す者が多数現れる。
「距離を保つ」か「痴漢」か、ひとたび他者に触れる話になると両極端な様相を呈する社会で、子どもたちに性をポジティブに教えるのはなかなか難しそうである。
1973年、京都府生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。時事、カルチャー、政治経済、子育て・教育など多くの分野で執筆中。著書に『オタク中年女子のすすめ』『女子の生き様は顔に出る』ほか。