欧州なんかでは、早い国では16歳から飲酒喫煙が許可されて(そもそも許可されなくても社会がだいぶおおらかなので)、子どもたちはまず高校生時点で恋愛やらパーティーやら現実世界でバカをたくさんやって先生にもたっぷり怒られて(勉強は物好きしかしない)、ある程度ヤケドのヒリヒリした痛みも治し方も知ってから、免疫をつけて勉強をしに大学へ行く。大人たちが子どものために「大人になるための修行期間」を用意している、そんな印象がある。
日本はノンアル・ノンスモーキング(かつコロナ禍ではリアルな接触も回避)という清潔な環境でまずはじめに責任を持たされ、失敗しないから免疫もないまま整った「いい子」になる。ヤケドも打ち身も骨折も負わず無傷でいい子に育った報酬として、修行も免疫もなしに20歳からようやく大人の世界をちょっと覗かせてもらえる、という仕組み。早くいい子にならないと大人に褒めてもらえないプレッシャーが強くて、日本の子どもはちょっと気の毒な状況なのである。
“予防接種型”性教育で教えられる「ネガティブなメッセージ」
日本での性行動に対する「免疫」の付け方は、例えるなら一度は痛い目を見て自分で学んで自己免疫をつけようという「実践型」ではなく、事前に学校の性教育で正しい知識を身に付けてからしくじらずに実践に移しましょうという「予防接種型」だ。
高校生が学校で習う性教育とは、性の仕組みはもちろんだが、「性感染症」や「性の多様性」「男女平等の問題」「性の不安や悩みについての相談窓口」「デートDV」「セクハラ、性暴力の問題」など、近年らしい社会性の部分や「してはいけないこと」にも重きが置かれている。
するとちゃんと大人の言うことを聞く真面目な子どもたちは、「性は生き物として当たり前のことで、誰かを好きになることの延長上にある素敵なものだ、目的は生殖だけじゃなくて、温かくて気持ちがよくてお互いを承認し合う幸せな行為だ、だから自分も相手も同じように大事にして楽しみたいね」というポジティブなメッセージより前に、「セックスをするとこんなことになるから気をつけろ、安易にするな、なんならするな」という負のメッセージを受け取ってしまうかもしれない。「リアルなセックスなんて不潔だし傷つくし面倒しか起こさない、そんなの要らない」と思ってしまうかもしれない。