困難に陥った女性が女性弁護士を頼る、しかしコスパは…

さらに、DVや虐待、ストーカー被害など差し迫った状況にある女性は「できれば女性弁護士に話を聞いてほしい」と望むことが多く、結果的に女性弁護士のもとにそういった案件が集まりやすいのだそうだ。これらは大きな報酬額が見込めず、かつ時間のかかるものが多い。

女性クライアントの話を聞く女性ビジネスパーソン
写真=iStock.com/recep-bg
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まとめよう。なぜ女性弁護士の平均収入は男性弁護士の半分以下なのか? それはけっして、女性弁護士のほうが男性弁護士よりも優秀ではない、からではない。構造的な問題である。

まず第一に、法律事務所には小規模なところが多く、弁護士はフリーランスに近い働き方になりやすい。そのため、出産・育児でキャリアが中断しがちで、収入が激減するのだ。

また第二に、女性である(男性ではない)ことを理由に、安定した収入の土台となる「企業顧問契約」の仕事が回ってきづらい。

そして第三に、DVやストーカーなど女性の事件を引き受ける割合が男性弁護士より高く、その分(言葉は悪くなってしまうが)採算の悪い仕事を抱えやすい。

ただ、こういった業界構造の問題を指摘しながらも、だからといって困窮女性の案件を減らそう、もっと効率のよい仕事をしたい、と考えている女性弁護士は、わたしの出会った中にはいなかった。世の中の不平等をわずかにでも正したい、困っている人を助けたいという志で働いている女性弁護士は非常に多いと感じている。

だからこそ、女性弁護士が長く、安定して働けるように、企業の経営陣のジェンダーバイアスが減るとともに、行政によってなんらかのアファーマティブな是正的措置が行われてもよいのではないか、と筆者は考えている。

藤井 セイラ(ふじい・せいら)
ライター・コラムニスト

東京大学文学部卒業、出版大手を経てフリーに。企業広報やブランディングを行うかたわら、執筆活動を行う。芸能記事の執筆は今回が初めて。集英社のWEB「よみタイ」でDV避難エッセイ『逃げる技術!』を連載中。保有資格に、保育士、学芸員、日本語教師、幼保英検1級、小学校英語指導資格、ファイナンシャルプランナーなど。趣味は絵本の読み聞かせ、ヨガ。