MBA取得は長期的に複利で効果を発揮する

そこで私はその理由を2つの視点から分析してみました。

1.人脈
2.ストレス耐性

です。

まず、人脈の側面です。

MBAは通称で「ビジネススクール」とも呼ばれ、主に社会人を対象としています。1881年に米国のウォートン・スクールが世界初のビジネススクールとして設立され、1908年に設立されたハーバード・ビジネス・スクールが現在のMBA課程の基礎を築きました。

MBAプログラムは、さまざまな業界や国からの学生が集まり、異業種の知識や新しい視点を学ぶ豊富な機会を提供しています。MBAのクラスメートや卒業生とのネットワークは、将来のビジネスパートナーや顧客、雇用の機会へとつながります。特にキャリアチェンジや起業時には、これが非常に価値あるリソースとなります。私も卒業後、起業や相続の相談にはじまり、共著で本を出版するなどの縁が生まれました。

A→Bという直線的な結果を求めるのではなく、長期的な視野を持つことが重要です。たとえば、「MBAに行く→給料が上がる」や「MBAに行く→人脈ができる」といった期待をするのではなく、まずは自分に提供できる土台がなければ、MBAでの学びを最大化することはできません。そして、その学びは、長い年月を経て、複利のように効果を発揮していくのです。

さまざまな困難を乗り越える力を養うことができる

そして、もう一つがストレス耐性を養う機会を提供してくれることです。

社会人経験がある学生は、すでに仕事を通じて経験している場合も多いですが、カリキュラムと多忙なスケジュールを通じて、「タイムマネジメント」や「チームワーク」の重要性を学びます。その中でクラスメートに認められ、高得点の課題を提出していかなければなりません。企業派遣の場合は、企業が費用を負担しているため成績を報告する重圧もあるでしょう。

将来のビジネスリーダーとしての能力を身に付けるだけでなく、生きていく上で必要不可欠な精神的な強さや事業のさまざまな困難に立ち向かう力を養うことができるのです。

慣れない土地で多国籍な仲間とグループで成果を上げることや、限られた時間で大量の課題を仕上げるタイムマネジメントは、仕事にも通じる大切なスキルです。また、語学のハンディを抱える日本人は、時に一緒のグループになることを敬遠されるかもしれませんが、それもまた、人とのつながりや生存戦略を学ぶ良い機会です。

究極の状況に追い込まれることで、人は次のような工夫をしはじめます。

・リーダーの道のりは孤独なものになりがちですが、サポートを得られる環境を整える工夫を考えます。
・大変な課題をこなすことで学びの面白さを忘れる瞬間があります。しかし大局を常に意識する長期的な目標に集中するマインドを育てます。
・失敗は終わりではなく、失敗から学び、前進することや、改善の機会と捉えるたくましさが身に付きます。達成したときの喜びの経験や情熱をもつことを見つけることで道のりが耐えやすいものになります。

スティーブ・ジョブズは「成功する起業家とそうでない起業家を分けるものは何か?」との問いに対し「その約半分は真の忍耐力をもっているかどうかである」との言葉を残しています。

将来起業する場合や、会社で新規プロジェクトを牽引する場面も想定内に上手く行くことは稀です。ストレス耐性とは、レジリエンスであり、適応する力や必要に応じて方向転換する力、そして道が不明確で障害が多いときであっても前進し続ける力なのだと思います。