少額積立投資は市場変化を乗り越える

今回の乱高下によって、新NISA(少額投資非課税制度)で株式投資を始めたばかりの人の中には、慌てて手放した人もいるようです。しかし、日銀が「異次元を正常化します」と言っただけで、株式市場にこれだけの影響が出たわけですから、異次元の政策を普通の状態に戻すだけです。パニックになる必要は全くないはずです。

また、毎月数万円の少額積立投資をしているのであれば、パニックになる必要はあるでしょうか。

2024年1月からスタートした新NISAは、口座開設が急増していますが、年間120万円の投資から生じる利益が無期限に非課税優遇される「つみたて投資枠」は、私は誰であっても始めたほうがいいと思っています。

既存の「つみたてNISA」は時限的な制度でしたが2021年、私自身が岸田政権下で発足した「新しい資本主義実現会議」のメンバーとして参画したときには、つみたてNISA制度の恒久化を提案しました。

少額のお金を長期的に毎月積み立てていけば、株価が下がればより多く口数を買えるし、株価が上がれば少なくしか買いません。つまり、価格が下がれば、購入する口数が増えるという気持ちの良い投資です。ですから株式市場が乱高下するときでも、価格に惑わされず落ち着いて資産を形成できるのです。

NISAの意義とは何か

今回の株価乱高下の経験を自分のものにしてみること。それは、「お金とどう向き合うか」を自問自答することに他なりません。投資へのいざない、そのもの。アクションのきっかけだと考えています。これからキャリアを積んでいく若者たちが、毎月丁寧に積み立てながら、時間をかけて資産形成するのを支える土壌だと思っています。

資産運用は「長期」「分散」「積立」が基本です。

木製のブロックとコイン
写真=iStock.com/Dilok Klaisataporn
※写真はイメージです

金融商品の種類や投資先の地域、業種を適度に分散させることで、リスクを減らす。日々の値動きにあまり左右されず、積立投資を続けることで、長期的に資産の形成へとつなげる。NISAも、これを基本にしたシステムです。ですから、毎月の家計で無理のない範囲の「つみたてNISA」を、私はお勧めします。

構成=池田純子

渋澤 健(しぶさわ・けん)
シブサワ・アンド・カンパニーCEO

1961年生まれ。83年テキサス大学卒業。87年UCLA大学MBA経営大学院卒業。JPモルガン銀行、ゴールドマン・サックス証券会社などを経て、2001年シブサワ・アンド・カンパニーを創業。08年コモンズ投信を設立し、会長に就任。多数の公職と共に、外務省「SDGsを達成する新たな資金を考える有識者懇談会」座長などを務める。著書に『渋沢栄一 100の訓言』(日経ビジネス人文庫)、『SDGs投資』(朝日新書)など多数。渋沢栄一の玄孫(5代目の孫)にあたる。