認知症になった義母・百合のこともシナリオ集ではより詳しく
自分の中では、問題提起と結論のバランスにおいて、結論が甘めにすぎるなという気持ちもあり、すごく悩んだところではありましたが、そうした少年犯罪や大人の見せるべき姿についての思いを込めて描いたつもりです。
私はドラマというのは視聴者が目にして初めて完成すると思っています。なのでシナリオはあくまで土台にしか過ぎず、完成品は映像の形になったものです。ただ、ドラマを観ただけでは、ちょっとわからないと思うところがあった方、言葉足らずに感じられた方の中には、何かしらの答えを知りたい人もいるはず。そういった意味では、元の台本をそのまま電子書籍化したシナリオ集では、説明のト書きもありますし、語りや寅子のセリフなどがカットされていませんので、順を追って読んでいただければ、より意図が理解しやすいかと思います。
例えば、ケアや介護の部分は、もっとたっぷりと描きたかったポイントです。ケアの問題に関しては航一の義理の母である百合さん、お手伝いの稲さん、「魔女5」の梅子がそれぞれ発言していますが、終盤では原爆裁判と尊属殺という非常に重要な裁判を描いたことで、15分のドラマに収まらず、本編ではカットされている部分もあります。
尺の関係でカットせざるを得ない部分もいろいろありましたが、ひとりひとりに物語があり、それぞれの設定を考え抜いてシナリオにしています。そうしたサイドストーリーなどはシナリオ集をお読みいただけると、より明確に言語化されていて、深く理解してもらえるのではないかと思います。
シナリオ集の「あとがき」には、こう書きました。
取材・文=田幸和歌子
1987年生まれ。神奈川県出身。主な脚本執筆作に映画『ヒロイン失格』、ドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』『君の花になる』『生理のおじさんとその娘』など。ドラマ『恋せぬふたり』で第40回向田邦子賞・第77回文化庁芸術祭優秀賞を受賞。アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』で第9回ANIME TRENDING AWARDS(ATA)最優秀脚色賞を受賞。執筆した小説に『恋せぬふたり』(NHK出版)など。