不自然なアンケートへの疑惑
さらに、県が実施した前出の「埼玉県立の男女別学校に関するアンケート」にも不自然な点が見受けられます。
本アンケートには大きな欠落があるように感じるのです。
それは、回答対象者の中に男女別学高校出身者(卒業生)が含まれていないこと。県のHPには、「県内の中学生や高校生、その保護者からの意見を幅広く聞きたい」との記載がありましたが、男女別学出身者が対象外なのはなぜなのでしょう。
男女別学の意義を問うのであれば、現在通っている当事者はもちろんですが、それと同じくらい、いやむしろそれ以上に、別学経験者である卒業生の視点は重要のはず。
彼らが「卒業後にどのような進路に進み、社会でどのように活躍をしているのか」「大人になった今、自分が経験した別学での生活をどのように感じているか」というのは、ダイレクトに男女別学の存在意義に繋がるはずです。
個人的な想像の範囲に過ぎませんが、その肝とも言える部分をあえてスルーしたのには、男女別学の意義を炙り出しにくくする意図があったのではと勘ぐりたくもなります。
それでも実際のアンケート(回答件数7万471件)では、「共学化したほうがよい」と回答した人は、中学生で4551件(18.7%)、高校生で570件(7.8%)、中学生保護者で2185件(13.8%)、高校生保護者で1237件(7.1%)と軒並み低い数字でした。
このような結果を受けても「共学化は、県教委が主体的に判断することで関係者の合意は前提としない」と突如宣言し、共学化推進をゴリ押ししようとする姿勢には強い違和感を抱きます。
まっすぐで誠実な意見交換を
県教委の説明に解せない点が多いのは確かですが、県教委、市民団体、県民、どのような立場の人も、子供たちが安心してより良い教育を受けられることを望んでいることは確かだと信じています。
議論の渦中にいる男女別学に通う埼玉県の高校生たちは、自分たちの高校がこの先どうなってしまうかと不安に思ったり、何とかしなくてはと焦ったり、と心が落ち着かない日々を過ごしているかもしれません。
意見交換会で目にした高校生のまっすぐな瞳と、緊張しながらも自分たちの思いを伝える姿を見て、子供たちが安心して自分に合った教育を受けることができる環境がいち早く用意されることを願ってやみません。
その手段が、共学化なのか否かという点の議論については、まだまだ収束は難しい状況ではありますが、彼ら男女別学高校に通う生徒たちは今後も意見交換を重ねていきたいとのこと。
様々な立場、考え方や価値観が混在する中で、一つの答えを出すことは非常に難しいことですが、少なくとも生徒たちのまっすぐな気持ちに真摯に向き合って、誠実な意見が交わせること、そして、彼らをはじめとする男女別学の生徒たちや卒業生、県に教育を託す県民の皆さんの納得感を大切にした有意義な議論になることを願います。
大手損保会社勤務時代にさまざまな女性の生き方、働き方に興味を持ち、女性を支援できるコンテンツ発信をするため、ライター・エディターに転身。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了。同大学院にて、女子校出身者のキャリアについて研究を開始し、現在も同大学院の研究員として研究を続ける。