自己流ホルモン治療は危険でいっぱい

最初から私にとっては絶望的な事実を突きつけられたようで何ひとつ希望が見えませんでしたが、とにかく何か手立てを探してやってみるしかありません。

みかた著、大谷伸久監修『そして夫は、完全な女性になった』(すばる舎)
みかた著、大谷伸久監修『そして夫は、完全な女性になった』(すばる舎)

「通常はカウンセリング治療をきちんと受けて、医師から確定診断書を得てからホルモン治療を開始する。ということは、フライングホルモンをしている時点で、もう既に正規の治療の手順は踏めないということか……」

と悲しくなりましたが、自己流で行なう投薬は体に負担があるおそれもあり、危険だということも分かりました。

知識がないまま自己流で錠剤を飲むと、適量が分からず多すぎて肝臓に大きな負担がかかったり、逆に少なすぎると効果が出ずに意味がなくなることもある。

医師の診療下で行なえば主に注射での投与となるので、錠剤よりも緩やかに体内に行き渡り、体への負担が軽減される。医師がホルモン剤の量を判断するので効果も出やすく、メンタルの急激なアップダウンを錠剤よりは抑えることができる、というのが調べた結果分かったことです。

以上のことから、「まずはジェンダークリニックに診察に行ってほしい」と夫に頼んでみることにしたのです。

男性を慰める女性
写真=iStock.com/Juanmonino
※写真はイメージです
みかた
トランスジェンダー当事者の元妻

2005年に結婚し平穏な日々を送っていたところ、2018年3月、夫が秘密裏に女性ホルモン剤を服用していたことが発覚。以後「女性として生きていきたい」という夫と話し合いを続けながら、夫の性別移行を最も近くで見守る。2020年、夫が戸籍上の性別を女性に変更することなどを機に離婚し、別々の人生を歩む。 現在はトランスジェンダー当事者の妻としての経験や、同様の境遇を持つ人々との交流で得た経験をもとに、情報発信を続けている。