婚外子や養子、LGBTカップルの出産は少子化対策となりうるのか。雇用ジャーナリストの海老原嗣生さんは「人生の選択肢を増やすという意味で、こうした方法は(しっかり制約を設けた上で)検討すべきだ。でも、これで少子化が解決することはありえない」という――。
LGBTのレインボーフラッグと結婚指輪
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政治家は解決に時間がかかるテーマは避ける

本連載では、少子化にまつわる「心の問題」を書いてきました。

最後は、多くの日本人がアレルギー反応を示すため、議論の俎上そじょうに上りにくい問題を考えていきたいと思います。取り上げるのは、婚外子、養子、LGBTカップルの出産、精子・卵子提供というナーバスなテーマ。

政治主導では、結婚に関する価値観など「議論に長い時間がかかるもの」や今回取り上げる「タブーとされてきた分野」は脇に置かれる傾向があります。一般民衆の投票で選ばれる議員は、任期中に成果が出しづらいことや、反対派から返り血を浴びるテーマは忌避するからです。

ただ、「異次元」で少子化対策を考えるのであれば、こうした論点についても、検討はしてみるべきでしょう。

「日本古来の」に大した歴史はない

なぜ、これらのテーマに、少なからぬ日本人がアレルギー反応を示すのでしょう。

理由の一つとして、日本古来の「家族」の形が変容するという意見がまま見られます。私はこの意見に賛成でも反対でもありません。

ただ一つだけ、書いておきたいことがあります。

「古来」という言葉が正しいのかどうか、について、です。

以下2つのデータ(図表1)、婚外子数の推移と、他児養子(血縁関係にない幼児の養子)数の推移を見てください。

【図表1】婚外子、他児養子数の推移
図表=人口動態統計を基に筆者作成

どうでしょう。婚外子、他児養子、いずれも昔は、今とは比較にならないほど数が多かったのが分かるでしょう。最多時期であれば婚外子は今の7倍ほど、生まれてくる子どもの約11人に1人でした。他児養子は最多期でも2万人程度ですが、これは今の40倍にもなります。過去には「妾腹が多かった」「戦災孤児や貧困などがあった」と今とは事情が異なるでしょう。ただ、今の家族の姿が、古来ずっとそうだったわけではないというのは事実です。

第13回で書いた40代の出産も、全くそうでしたね。

3つとも、戦前から戦争直後まで今よりずっと高位で安定しており、それが1950~1970年の間に急激に落ち込み、今の形となりました。

そう、私たちの思う「日本古来の家族像」の多くはこの時期に作られた真新しいものなのです。