同棲割合が高くなければ出生率上昇に寄与しない

以下、私のわかる範囲で、婚外子と出生率について解説します。

まず、婚外子が出生率をある時点まで伸ばしていたフランスですが、この国は1960年代からユニオン・リーブルと呼ばれる結婚しないカップルが多数いました。サルトルとボーヴォワールなどがそうですね。

彼らが出産しないため出生率が急降下したので、婚外子を認めざるを得なかったという事実があります。つまり、結婚しないカップルが現状で多いか、少ないか、が一つのポイントとなるでしょう。

世界主要国の20~40代の未婚で同棲している人の割合を見ると、イギリス・フランス・ドイツが25%程度、ノルウェーは30%超、アメリカでも12.4%となっています。対して日本はたったの0.9%……。

【図表3】未婚同棲率(20~49歳)の国際比較
内閣府「少子化社会に関する国際意識調査」より筆者作成

未婚同棲者があまりにも少ない日本は、婚外子を認めたところで、それほど大きな変化はないと思われるのです。

未婚同棲率が高い国でも、婚外子を認めるようになると、当初は出生率が伸びますが、その後は、逆に通常結婚が減って未婚率が上がるだけのことになり、出生率は低下傾向を示すようです。

少子化対策ではなく、人生の選択肢拡充のために

日本の場合、もし、婚外子を増やすのであれば、「同棲もしていない人が独身のまま子どもを産む」ということになります。そのためには、精子提供や卵子提供をセットに考えねばならないでしょう。こうした施策は、政府の旗振りで啓蒙けいもう活動をしたとしても、なかなか広まるものではありませんし、周囲の古い常識を払拭することもできません。なので、笛吹けど踊らず、で早晩手詰まりとなるのが目に浮かびます。

即効的な浸透策としては、産婦人科学会のガイドラインを見直したうえで、独身女性への精子提供や、独身男性への卵子提供&代理母などを公的支援するしかないでしょう。

そうすると、「今までなら結婚していた人が、独身のまま子供を授かるようになり」、未婚率がさらに上がる弊害も考えられます。

それくらい大変なことになる割に、政府が意図する少子化緩和効果は大したことがありません。30代後半の女性未婚率は26.5%であり、そのうち、子どもが欲しい割合(希望0人を除く)は16%程度。この中で、未婚でも産み育てる決心をした人たちしか対象とならないので、出生率のアップはそれほど望めないでしょう。