「個人の成長」か「組織の成長」か

今どきの若手の未来像は「組織の成長」よりも「個人の成長」に焦点が当たっていることが多いように感じます。「いかに自分が成長するか」「会社が自分をどう成長させてくれるか」を重視し、「会社という組織全体で成長する」という視点が抜けてしまうのです。

視点が個人の成長に向いていると、どうしても、ほかの人と競って「チームの中で自分がいちばん優秀」「同期の○○よりも勝っている/負けている」ということが気になってしまいます。わからないことがあったときも、人に聞くのは自分の弱みを見せるように思えてしまいますし、課題を指摘されると、負けたように感じて機嫌を損ねてしまう。「チームで協力し合うことで、目的を達成する」「チーム全体で成長する」といった発想にならず、人と協力することができなくなってしまうのです。

ですから、まずは先ほどお伝えした「最初に上司の側が話す」「最初に予告して、話の最後に質問させる」「ポジティブ:ネガティブ=7:3にする」という3点を実践しながらも、個人の成長だけを重視するといった発想を、変えてもらうことを考える必要があるでしょう。

「個人の成長だけでなく、チームや会社という組織全体で成長することが大事」と、何度も伝えることで、徐々に視点が変わり、「チーム全体で成長するために、自分は何ができるか」を考えられるようになってくるはずです。

構成=池田純子

井上 智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医

産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。