「良くない」姿勢はリラックスのための姿勢

このように、一般的に「良くない」と言われる姿勢を見てくると、大体において身心をリラックスさせるための姿勢だということがわかります。良いと言われる姿勢でも、ずっと続けていれば疲れます。姿勢の一部が固まり、自然とゆるめたくなるのです。

日常で私たちがついやってしまうこのような姿勢は、「持続可能」な自分自身でいるための工夫でもあります。

もちろんTPOはわきまえなければなりませんが、一人でいる時や気のおけない相手といる時は「だらしない」「行儀悪い」といった意識を脇において、自分のとりたい姿勢をとるのが、身体にとっては得策と言えるでしょう。

伸びやあくびも、身体をゆるめるためにはとても効果的です。

基本姿勢チェック:床の上に寝て、背中の感触を確かめる

今の自分の姿勢が自在に動けるリラックスした状態なのか。それとも、ゆるむ必要があるこわばった状態なのか。ちょっとチェックしてみましょう。

片山洋次郎『姿勢をゆるめる 疲れない身体と心の整え方』(河出書房新社)
片山洋次郎『姿勢をゆるめる 疲れない身体と心の整え方』(河出書房新社)

姿勢の状態を知るために一番わかりやすいのが、寝た時の背中の感触です。

床の上に、仰向けに寝てみましょう。

ヨーガのシャバーサナ(死体のポーズ)と同じで、全身が脱力し切った状態です。

この時、背中全体が床に気持ちよく触れている体感、つまり、床にクターッと身をゆだねている体感があれば、良い姿勢。身心の安定そのものの姿勢です。

逆に、床と腰の間に手のひらが入るような隙間ができるのであれば、身体のどこかが疲れていたり緊張したりしている証拠です。

仰向けに寝て全身の力を抜く

仰向けに寝て全身の力を抜く
片山洋次郎『姿勢をゆるめる 疲れない身体と心の整え方』(河出書房新社)より

床に腰がピッタリつくのがリラックスした“良い姿勢”(腰と床の間に手を入れてみるとわかりやすい)。「良い姿勢」に見えても、腰が床から浮いていれば姿勢にこわばりがあり、良くリラックスできていない。

片山 洋次郎(かたやま・ようじろう)
整体師

1950年神奈川県生まれ。東京大学教養学部中退。現在、身がまま整体 気響会を主宰。20歳代半ば、自身の腰痛をきっかけに整体に出会う。その後、野口晴哉の思想に触発されながら独自の整体法の技術を創り上げる。著書に『骨盤にきく』『身体にきく』『整体かれんだー』『女と骨盤』(以上文春文庫)、『自分にやさしくする整体』(ちくま文庫)、『生き抜くための整体』(河出文庫)、『呼吸をふわっと整える』(河出書房新社)などがある。