聞かれている内容を正確に確認する

例えば「なんかおもしろい企画ない?」と聞かれたら、あえて答えず、聞かれている内容を正確に確認します。

→「いままでと違ったテイストの企画ってことですよね?」
→「みんながワクワクするプランってことですよね?」
→「これまでにアプローチしてきた対象を変えた内容ってことですよね?」

こんなふうに掘り下げていくと、

→「まず、いままでの企画を一度洗い出してみてもいいですか?」
→「ワクワクを定義するところからはじめるのがいいかもしれません」
→「○○の層にはまだアプローチしていないのでいかがでしょうか?」

と議論が深まっていきます。

「質問の内容を確認するなんて当たり前でしょ」と思う人が多いと思います。

でもこれが結構甘く見られがちです。

人は何か聞かれると反射的に答えようとするからです。

検証済みのマークが付いた木製キューブ
写真=iStock.com/Ciprian Alexandru
※写真はイメージです

思い切って立ち止まる勇気が必要

「答えないと突っ込まれるかもしれない」「即答できないとダメな奴だと思われるかもしれない」、そういった思いがよぎるからでしょう。

だから反射的に言葉を発します。

反射の力は強大で、熱いヤカンを触って「アチッ!」と言うくらい、瞬間的に発動するのです。

そうならないためには思い切って立ち止まる勇気が必要。

それが、あえて答えず聞くことです。

◆例1「最近の若者のアルコール離れをどう思う?」と聞かれたら……
→「なぜ離れているか、その原因ということですよね?」
→「どんなアプローチが考えられるか、ということですよね?」

◆例2「○○の件、どうしたらいいと思う?」と聞かれたら……

→「実施するかしないか、ということですよね?」
→「誰に任せるか、ということですよね?」

議論の目的は自分が100点の回答を出すことではありません。

双方の会話の中で100点が生まれることです。

桐生稔『提案・指示・交渉・雑談・プレゼン・会議etc. あえて話さない戦略』(大和出版)
桐生稔『提案・指示・交渉・雑談・プレゼン・会議etc. あえて話さない戦略』(大和出版)

どっちが正解を答えたかは重要ではないです。

議論を深めるために「答える」というアクセルがあれば、「答えない」というブレーキがあってもいいはずです。

車はアクセルとブレーキが同時に進化したからこそ、ここまで発達しました。

即答しないことも、また答えです。

あえて答えないことも建設的な議論を生み出す一助になります。

あえて即答せず内容を吟味する
桐生 稔(きりゅう・みのる)
モチベーション&コミュニケーション代表取締役

1978年生まれ。新潟県出身。2017年、「伝わる話し方」を教育する株式会社モチベーション&コミュニケーションを設立。日本能力開発推進協会メンタル心理カウンセラー、日本能力開発推進協会上級心理カウンセラー、一般社団法人日本声診断協会音声心理士。著書に『10秒でズバッと伝わる話し方』(扶桑社)、『雑談の一流、二流、三流』、『質問の一流、二流、三流』(ともに明日香出版社)がある。