職場で突然質問されたり、急に意見を求められたりしたときにはどう答えればよいのか。モチベーション&コミュニケーション代表の桐生稔さんは「本音を言えば、答える前に少し考える時間がほしいがそんなことは言えない。こういう場合には『答える』のをやめ、『聞く』、つまり即答せず、あえて相手の質問を吟味するとよい」という――。

※本稿は、桐生稔『提案・指示・交渉・雑談・プレゼン・会議etc.あえて話さない戦略』の一部を再編集したものです。

いきなり上司から想定外のことを聞かれたら

職場で仕事をしていると、突然質問されたり、急に意見を求められたり、いきなり想定外のことを聞かれたり……。

うまく答えられないときもあります。

例えば、突然上司から「なんかおもしろい企画ない?」と聞かれたら。

「おもしろいって……」、急にそんなにポンポン出てこないですよね。

会議でいきなり「どうしたらいいと思う?」と意見を求められることも。

「どうしたら……」、そんなアバウトなことを聞かれても、なんとも答えづらいものです。

落書きの書かれた壁を見て悩むビジネスマン
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「答える」のをやめて「聞く」

以前、こんな会議がありました。

お酒の販促会議をしていて、上司が部下にヒアリングしています。

「Aさんはお酒飲むの?」→「ほとんど飲まないです」
「Bさんは?」→「僕は毎日飲みます」

Cさんも当然自分のお酒事情を聞かれると思っていました。

ところが、

「Cさんは最近の若者のアルコール離れについてどう思う?」→「えっ! 私だけ意見?」

想定外の質問にCさんは言葉を詰まらせてしまいました。

答えられないのに、無理やり答えようとすると、

・的外れなことを言ってしまう

・不用意に答えて突っ込まれる

・撤回できず、あとに引けなくなる

・もっと違うことを言えばよかったと後悔する

そんなことが起こります。

本音を言えば、答える前に少し考える時間がほしいですよね。まさにバレーやバスケでいうタイムアウトみたいな時間です。

でも、「少し考えたいので5分お時間いただけますか?」なんて言えませんよね。会話はリアルタイムで進んでいます。

ポイントは、「どうやって会話をしながら答えを考える時間を確保するか?」です。

そこで、こう考えてみてください。

「答える」のをやめる。

そう、「聞く」です。

つまり即答せず、あえて相手の質問を吟味すること。

聞かれている内容を正確に確認する

例えば「なんかおもしろい企画ない?」と聞かれたら、あえて答えず、聞かれている内容を正確に確認します。

→「いままでと違ったテイストの企画ってことですよね?」
→「みんながワクワクするプランってことですよね?」
→「これまでにアプローチしてきた対象を変えた内容ってことですよね?」

こんなふうに掘り下げていくと、

→「まず、いままでの企画を一度洗い出してみてもいいですか?」
→「ワクワクを定義するところからはじめるのがいいかもしれません」
→「○○の層にはまだアプローチしていないのでいかがでしょうか?」

と議論が深まっていきます。

「質問の内容を確認するなんて当たり前でしょ」と思う人が多いと思います。

でもこれが結構甘く見られがちです。

人は何か聞かれると反射的に答えようとするからです。

検証済みのマークが付いた木製キューブ
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思い切って立ち止まる勇気が必要

「答えないと突っ込まれるかもしれない」「即答できないとダメな奴だと思われるかもしれない」、そういった思いがよぎるからでしょう。

だから反射的に言葉を発します。

反射の力は強大で、熱いヤカンを触って「アチッ!」と言うくらい、瞬間的に発動するのです。

そうならないためには思い切って立ち止まる勇気が必要。

それが、あえて答えず聞くことです。

◆例1「最近の若者のアルコール離れをどう思う?」と聞かれたら……
→「なぜ離れているか、その原因ということですよね?」
→「どんなアプローチが考えられるか、ということですよね?」

◆例2「○○の件、どうしたらいいと思う?」と聞かれたら……

→「実施するかしないか、ということですよね?」
→「誰に任せるか、ということですよね?」

議論の目的は自分が100点の回答を出すことではありません。

双方の会話の中で100点が生まれることです。

桐生稔『提案・指示・交渉・雑談・プレゼン・会議etc. あえて話さない戦略』(大和出版)
桐生稔『提案・指示・交渉・雑談・プレゼン・会議etc. あえて話さない戦略』(大和出版)

どっちが正解を答えたかは重要ではないです。

議論を深めるために「答える」というアクセルがあれば、「答えない」というブレーキがあってもいいはずです。

車はアクセルとブレーキが同時に進化したからこそ、ここまで発達しました。

即答しないことも、また答えです。

あえて答えないことも建設的な議論を生み出す一助になります。

あえて即答せず内容を吟味する