10年後に「値上がりしないマンション」は不動産ではない

土地が下がり続ける時代が続いている。

山下努『2030年不動産の未来と最高の選び方・買い方を全部1冊にまとめてみた』(東洋経済新報社)
山下努『2030年不動産の未来と最高の選び方・買い方を全部1冊にまとめてみた』(東洋経済新報社)

「インフレ時代だから違うでしょう」と反論されるかもしれないが、そんなことはない。

人口減少と過疎化で全国の土地のほとんどが値下がりしている。地方にあっては公示地価よりずっと安くないと売れないところは無数にある。土地や家屋(多くの場合は空き家)の相続で登記や測量をすれば、それだけで赤字になる場合は少なくない。

そんな時代に「10年後に値上がりしないマンションは不動産ではない」と言うと、上から目線で非常識ではないかと思われるかもしれない。

しかし、東京など大都市の土地のごく一部は、値下がりせず、調整局面を除けば上がり続ける時代に入っている。

それゆえ、税務評価と実質価値(時価)の乖離が見られるタワマンは優位な商品で、税務署対策を考えても中短期投資の視点で買える。

お得な穴場エリアを探そう

「埋め立て地の湾岸に住む人の気が知れない」という声(ほとんどは山の手族の遠吠え)もあるが、津波や地震のリスクを限定するには短期売買が適している。そのほうがもうかる確率は高い。

「住宅は一生もの」という前提で、首都直下地震等のリスクも織り込めば、何も買えない。

それは、過去10年を見れば如実にわかることだ。デフレだからマンションが値上がりしないということはない。そもそも不動産は、家賃以外は物価統計に入っていない点などから、常識を疑うことから考えてみよう。

日本経済と人口が減少し、経済が縮小していても、今後も人口が増えて、経済が拡大する地域は数多く存在する。

できれば、本書中にあるたくさんのヒントを参考に、まだあまり注目されていない、お得な穴場エリアを探し出してほしい。

山下 努(やました・つとむ)
元朝日新聞経済部記者、経済ジャーナリスト

1986年朝日新聞社入社、大阪経済部、東京経済部、『ヘラルド朝日』、『朝日ウイークリー』、「朝日新聞オピニオン」、『AERA』編集部、不動産業務室などに在籍。2023年朝日新聞社退社。不動産業(ゼネコン、土地、住宅)については旧建設省記者クラブ、国土交通省記者クラブ、朝日新聞不動産業務室などで30年以上の取材・調査経験を誇る。不動産をはじめとする資本市場の分析と世代会計、文化財保護への造詣が深く、執筆した不動産関連の記事・調査レポートは1000本以上に及ぶ。『不動産絶望未来』(東洋経済新報社)、『「老人優先経済」で日本が破綻』(ブックマン社)、『世代間最終戦争』(立木信名義、東洋経済新報社)、『若者を喰い物にし続ける社会』(立木信名義、洋泉社)、『2030年不動産の未来と最高の選び方・買い方を全部1冊にまとめてみた』(東洋経済新報社)など多くの著書がある。