「家族数に合わせた部屋数」「標準的な間取り」に惑わされるな

「住宅に家族数を合わせようとは何事か!」という反論もいただく。そういう考えが少子化を促進し、家庭の団らんや家族の幸せを奪うという主張だろう。

しかし、社会全体では、「住宅に家族数を合わせる」ということが無意識で進んでいる。

これだけ少子化が進めば、標準的な家族の構成員数は2~3人までだろう。

間取りの常識も変わりつつある。

固定電話はそれぞれの携帯電話となり、テレビを観ない家庭も急増している。

そうなると、居間の機能も変わっていく。

ひと昔前は、家族が集まってテレビや新聞を見ながら団らんというのが居間のイメージだったが、テレビや新聞がなくなれば、食事が団らんのメインイベントとなる。

働き方の多様化など、さまざまな事情で家族が同じ時間に集まれないケースも多く、居間機能の空洞化も指摘される。共働きの両親を気遣って、子どものほうから「休みの日ぐらい家族一緒に外食しようよ」ということもある。

日本料理店で夕食を食べる家族
写真=iStock.com/monzenmachi
※写真はイメージです

家族の団らんはレストランでしてもいい

一方、コロナ禍による在宅勤務の流れで、居間を仕事場に有効活用する動きが出てきた。マンション1億円時代に対処するには、居間の機能を複合化し、居間を隠れた空き部屋(不良資産)にしないことだ。

もし共働きで忙しいなら、キッチンもつぶすという検討もできる。コンビニやスーパーの前の物件に住めば、そこにキッチン機能を丸投げできるし、マンションに洗面所があれば水は使える。

居間の団らん機能は、近くのレストランなどに機能移管できるかもしれない。立派なキッチンがなくても、都心には疑似キャンプやバーベキューができる施設もあるので、「家族で一緒に料理」もマイホームの枠を超えて実現可能だ。

閑静な住宅街では難しいが、都市部の駅徒歩10分圏内なら、分解した自宅の機能を自宅外で賄うことができる。そもそも外で働くこと、子どもが幼稚園や学校に通うこと、衣服のクリーニングなどのさまざまな行為も、自宅機能の外出しといえるのだ。

「そんなことをしたら、食育を含め育児そのものが崩壊する」と批判もあるだろうが、臨機応変に考えることで工夫の余地も生まれるだろう。

マイホームを取り巻く常識や思い込みは、そこに購入者を引きずり込む蟻地獄のようだ。

常識に惑わされて無駄な間取りをつかまされないよう、警戒してほしい。

自身と家族のライフスタイルによって、ベストな間取りは変わる。自宅はビジネスホテルと割り切って使うのもよいのではないだろうか。

コロナで大規模オフィスよりシェアオフィスが注目されたように、マイホームを部屋の集合体と考えると、面白い使い方ができるかもしれない。