志望書はラブレター、面接はデート

当社が仲人役を務める大人のインターンシップには、これまでの社名や役職、じつは要らないんです。なぜならお相手(インターン先)は、その人の肩書きと仕事をしたいわけではないからです。

逆に必要なのは、「この人と一緒に働きたい」と思わせること。

先方に、「時間を割いてあなたと働きたい」「この人になら、当社の悩みを話せそう」と思ってもらうこと。これが重要です。

そのために面談は、相手に「自分が何者か」をわかってもらう機会であり、「あなたと何がしたいか」「あなたと何ができるか」をわかりやすく伝える場であると理解することが大切です。

思えば、転職の志望書はラブレターであり、面接はデートのようなものかもしれません。

誰も、デートの最初に名刺を出したりはしません。自分の人柄を伝える手段が名刺ではないように、勤務先の社名や年収が必ずしも自分の実力を示す方法にはならないのです。

こうして今の仕事を続けながら、今までと異なる環境に触れて「会社にどっぷり浸かっちゃってる自分」「会社に就職してしまっている“就社意識”の自分」に気づくこと。いわば「会社と自分を切り離すこと」から、セカンドキャリアの道は開けてゆきます。

ガッツポーズで喜ぶシニア男性
写真=iStock.com/Yuto photographer
※写真はイメージです

あなたの知らない自分の強み

転職・副業市場に役立つ初めの一歩、「鎧=プライドを手放すこと」について、ここまで述べてきました。

次なる一手は、「自分の強みを知る」こと。

いわばそれは、不要なプライドを捨ててもしっかり手元に残るもの。「ポータブルスキル」といわれたりしますが、それがあなたの実力であり、実は自分ではなかなか見つけられないものでもあります。

良い方法があります。周りの人に聞いてみるのです。家族でもいい、友人でもいい。私たちの研修では、オンライン上で予習のワークシートを基に、ワークショップをやります。たまたま居合わせた見知らぬ他人同士からもらった一言が、自分の強みを見つけるきっかけになっています。

「人は自分の匂いがわからない」という言い方がありますが、自分が普段から無意識に行っていることほど気づかないもの。文章を書くのが好き、検索が速い、資料の作成に長けているなどなど、「え? こんなフツーのことでいいの?」と思ってしまうようなことが、社会においては役立つ「強み」になるのです。

40代から50代の転職数増加に伴い、セカンドキャリアの転職・副職市場は今後、ますます活発化していくことでしょう。実際、2023年の転職者数は、2018年に比べて4倍近くに伸びているとのデータも出ています。

ただし、転職率のデータを見ると、数字は決して甘くありません。全世代平均7.5%に対し、50代は3.4%、40代でも5.6%。転職数は増加しているとはいえ、要するに、厳しい市場です。

ですが、むやみに悩む必要もありません。いちど、これまでの人生を棚卸しするようなつもりで、自分をイチから知ってみる。素直になればいいのです。セカンドキャリアの実践には、それが必要不可欠な心がまえです。

構成=大場葉子

大桃 綾子(おおもも・あやこ)
キャリアコンサルタント

1981年、新潟県生まれ。東京外国語大学(中国語)卒業、慶應義塾大学大学院社会学研究科修了。三井化学にて人事・事業企画に約10年従事。丸亀製麺を運営するトリドールホールディングスを経て、起業。Dialogue for Everyone 代表取締役。