年収が3分の1になる再雇用

「とはいえ、先立つものがなければ困るんですが……」

ハイ、お気持ちはもちろんわかります。お金ですね。

大手企業の年収を長年背負ってきた人は、その数字の荷物をなかなか下ろせません。

ですが、定年になり再雇用となったときには、それは容赦なく半分か3分の1になります。

しかも仕事の内容は変わらないケースも多い。同じことをしながら年収がガクンと減ってしまっては、「モチベーションを持ってやれ!」というほうが無理筋でしょう。そんな日々のむなしさで心身をすりへらし、うつうつとした暗い日々を送るなんてあまりにももったいない。

50代以降の時間は、思っている以上に長いのです。しかも、若い頃のようにあっという間には過ぎません。そんな現実に気づくことこそ、むしろ“先立つもの”にするべきです。まずは、事実を直視して、目の前に延びている道の景色に気づくことが先決です。

退職の先に続いている道
写真=iStock.com/DaLiu
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目の前に見える道は、一本道ですか? 

だとしたら、ちょっと深呼吸をしてみましょう。これまで一つの組織や一つの信念で頑張り抜いてきた人ほど、他の道が見えにくくなっていることでしょう。

私自身も会社員時代は、再雇用か転職の2択しか見えていませんでした。ですが、人生100年時代といわれるようになり、独立や起業など選択肢は多様になり、「再雇用に併せて副業」などと複数の組み合わせも可能な社会になりました。これまで一本足打法で打ち続けてきたのなら、これからは両足を地面につけて、これまでとは違う姿勢でボールを見極めればいい。

今までの自分は今までの自分。これからの自分はこれからの自分。自分自身だって、多様なのです。

今すぐ、鎧を脱ぎ捨てよ

シニア期こそ輝いていい。そう開き直れるのが、半世紀生きてきた者の特権です。

その特権に資格があるとすれば、それはなんでしょう。

「鎧を脱ぐこと」です。

今、あなたが着ているヨロイをすっかり脱ぎ捨てることです。

鎧とは、「プライド」でもあります。役職であったり、年収であったり。要するに、会社から「与えられたもの」です。

ある日、地方企業とのインターン面談の場で、副業を志す大手企業の方が、こんな自己紹介をされました。いわゆる“ハイスペック中高年”の人です。

「○○会社の部長の△△です。マーケティング業務をしながら、社内のDX化を推進してきました」

経歴書を画面に映しながら、「SDGs」や「ウェルビーイング」が興味だとし、これまでの実績を述べられました。「購買プロセスにおけるペルソナを可視化させるためにカスタマージャーニーを、ウンヌンカンヌン……」。横文字が続くその話に、相手は引いていくばかり……。当然ながら、このインターン先からはお見送りとなりました。「相手に理解してもらおう」との気遣いがなく、先方の意識に残ったのは、誰もが知るその社名のみだったからです。