あやしい情報ほど届きやすい状況になっている

――今おっしゃった学会などは、根拠を示しながら客観的な立場で説明してくれるので信頼できそうですね。多くの人に学会がそういったリリースを出していることは知ってほしいとは思いますが。言ってしまえば、胡散臭い人たちってアピールが上手なので……。

【森戸】そうなんですよ。不安につけこむから、しっかり届いてしまう。

――SNS全盛の最近では、垢抜けた伝え方をしないとなかなか、一般の人にリーチしにくいというのはあるかもしれません。

【森戸】学会のサイトに行っても、文章が長く書いてあるだけだったりします。国立成育医療研究センターがYouTubeをやってるんですけど、再生回数がまだ少ないようです。「乳幼児突然死症候群はこのように防ぎますよ」などいいことを言っているんですけど、あんまり知られないだろうなあと思って。厚生労働省も赤ちゃんが泣き止まないときに、どうしたらいいかという動画を出しています

※厚生労働省YouTubeチャンネルより

新潟大学の小児科学教室もInstragramXを一生懸命やっていて、いい情報を載せているんですよ。

――そういったものはさらに世の中に広まってほしいですね。

【森戸】ただ、「なんとか認定講師」と自称している人がエビデンスのないことを書いていて、お互いコピペしあっているから、たくさんの人が書いているように見える。たしかな情報のように見えてしまうのは困ったことです。イラストもキャッチーでかわいく目を引くようになっています。

――正しい情報を発信する側にもがんばってもらいつつ、それを受け取る側も精査する目を養っていきたいところですね。今回も有益なお話をありがとうございました。

長時間の寝たフリから解放されるのはバラ色

「子どもを一人で寝かせる」とは、5歳の娘を妻と交代で寝かしつけてきた筆者自身にとって、かなり酷に感じられるのだが、睡眠の質の向上といったメリットが指摘されているのであれば検討するにやぶさかではなくなる。それに、長時間の寝たフリから開放されるのはかなりバラ色に思える。

森戸先生が言われていた通り、あくまで「子どもに一人寝をさせる」という選択肢があるだけのことである。これは当然強制でもなければ、推奨というのにもちょっと憚られる。ただし、日本の従来型の寝かしつけがある一方で、欧米風の「小さい頃から一人寝」というやり方があって、それが否定されるようなものではないと知られていけば、保護者の選択肢の幅が広がってより豊かな世の中に一歩近づくはずである。

森戸 やすみ(もりと・やすみ)
小児科専門医

1971年、東京生まれ。一般小児科、NICU(新生児特定集中治療室)などを経て、現在は東京都内で開業。医療者と非医療者の架け橋となる記事や本を書いていきたいと思っている。『新装版 小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』『小児科医ママとパパのやさしい予防接種BOOK』など著書多数。