子どもは何歳から一人で寝かせるのがいいのか。小児科医の森戸やすみさんは「睡眠時間と同様、これにも正解がない。ただ、日本を始めアジア諸国で習慣的にそうしているように添い寝がマストと考える必要はない」という――。
ベビーベッドで寝ている赤ちゃん
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生まれてすぐ別室に寝かせる欧米式

――子どもが小さい頃は特に寝かしつけが大変で、保護者は子どもが寝るまで数十分、下手したら1、2時間も添い寝で絵本を読んだり寝たフリをしたりすることになります。家事や仕事を残したまま子どもと一緒に寝落ちしてしまったという苦労は、多くの保護者が体験したことのある“あるある”だと思います。

そんな中で日本でも、保護者が子どもに添い寝する従来型寝かしつけだけでなく、「子どもを1人で寝かせる」という選択肢が徐々に認知されてきました。これが実践できれば育児の負担の一部をかなり減らせるなと思える一方、これまでの寝かしつけ方法とは180度違うので、導入には心理的に抵抗を覚える方も多いと思います。

子どもを1人で寝かせることは、医学的にどのように評価されているのでしょうか?

【森戸】「消去法」という方法がいいとされています。決まった時間に別室に寝かせ、泣いたら様子を見に行くが特に危険なことがなければ一定の時間あるいは朝まで何もしないという方法です。

ところが、日本のような、親が子どもと一緒に寝る文化の子どもは特に「親がいないと私は1人で眠れない」「眠らないでいると親の関心を引くことができる」というふうに誤学習してしまっているケースが多いと見られています。

薗部容子さんという女性が、日本で1人目を産んで、イギリスで産んでフランスで産んでと、3人のお子さんがいて、ヨーロッパと日本で育児のあり方があまりにも違うのでびっくりしたというふうに著作の中で書いてらっしゃいました。ヨーロッパでは生まれてすぐの段階で別の部屋で寝かせて、泣いたから様子を見に行くというスタイルです。日本人の感覚からするとそれで大丈夫なのか心配になるんですけど、実際にヨーロッパの子たちは問題なく大きくなっています。大人になってとんでもないことになっているわけではない。

アジアは添い寝文化

【森戸】最近は外来に色々な国のお母さんたちがいらっしゃるから聞くんですけど、だいたいアジアの方だと一緒に寝る添い寝文化なんです。日本だと部屋数も少ないし。

だから子どもが「親が隣にいてくれないとダメ」と思い込んでいるわけですが、「そうじゃない文化もある」ということを知っていると、消去法がやりやすくなると思います。「あなたは寝る時間。お母さんたちはこれからおうちのことをやります」といったことを、早いうちに教えていくわけです。