4%ずつ取り崩し、なるべく資産を減らさず生活する

「資産形成の時期」から、老後資金をいよいよ生活費に充てる「資産取り崩しの時期」へと移行したとき、注意すべきなのが、その取り崩し方です。

これについては、「4%ルール」という戦略が有名なので、耳にしたことがある人は多いことでしょう。

木製の立方体4の数字
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アメリカのトリニティ大学の研究チームが1998年に発表したレポートで「退職後の資産を毎年4%ずつ定率で取り崩し続ければ、資産は減らない」という試算を発表しました。

例えば、2000万円の資産であれば、その4%にあたる80万円を毎年取り崩し続けても、2000万円はずっと減ることがない、ということです。

毎年一定額を引き出すことができるうえ、資産を長期にわたって維持することが可能となるため、「4%」という数字は「安全引出率」として広く認知されるようになりました。

もしこの方法を取り入れる場合は、年に一度まとめて1度に取り崩すのではなく、「毎月」の12回に分散することをお勧めしています。上の例でいえば、2000万円の4%にあたる「80万円」を12で割り、「6万6666円」を月に一度、取り崩すわけです。この場合、運用利回りだけを取り崩すことになるため「2000万円」はずっと残り続けます。

もしも取り崩し額を「月10万円」にした場合でも、70歳から取り崩し始めたときは97歳まで持つ計算になります。

なぜそんな面倒なことをするのかというと、一度に取り崩してしまえば、ある程度のまとまったお金が銀行もしくは手元で現金として塩漬けになってしまうため。

月に一度の取り崩しにすれば、残りの金額はそのまま運用され続けることになるわけです。これが数年間続けば、チリツモで大きな差額になる可能性は高いでしょう。

「そんな面倒な!」と思うかもしれませんが、たとえリタイア後の「取り崩しの時期」に入っても、「長期分散運用」という基本理念は忘れないようにしてください。

寺澤 真奈美(てらさわ・まなみ)
ファイナンシャルプランナー(FP)、リンクプライズ代表

通信費見直しアドバイザーとして500件以上の見直し実績を持つ。企業とのタイアップ企画実績もあり、その領域の知見も豊富。保険や金融商品を販売しないFPとしてマネー相談を提供するだけでなく、米国Gallup社認定ストレングスコーチ®の資格も有し、FP×コーチ視点でクライアントの強みを引き出すアプローチに定評がある。著書に『NISA、保険、助成金もスッキリ分かる 子どもにかかるお金大全』(光文社)がある。