老後資金の取り崩し金額はいくらにすべきか
ここでは「定額」をベースに取り崩し方を考えてみましょう。取り崩しの金額を大きくすると、その分、老後資金が底をつくのが早くなります。平均寿命で計算してしまうと、思ったより長生きした場合に困ります。100歳まで長生きすることを想定して計算するといいでしょう。
実際の取り崩し金額は、次のような式で計算します。
年間の取り崩し額=老後資金÷(100−取り崩し開始年齢)
つまり、「年間の生活費+年間の取り崩し金額=年間で使えるお金」です。この金額では足りない場合には、生活費のダウンサイジングか、少し収入を得る方法を考えるのがいいと思います。
新NISAで老後資金の運用をする際の注意点は、全額を新NISAにしないことです。新NISAではリスク商品に投資するので、増えることもあれば減ることもあります。インフレリスクがあると言っても、一部は預貯金で持っておくようにしてください。
では実際に「60歳貯蓄ゼロ」から新NISAを活用して、老後資金をつくる方法をシミュレーションしてみましょう。
夫婦2人暮らしで70歳時点の貯蓄は2660万円に
最初は夫婦ともに60歳で2人暮らしのケースです。子どもは2人ですでに独立していますが、大学進学時に浪人したり、在学中に留年をしたりして、予定より教育費がかかる期間が延びてしまい老後資金づくりが後回しになってしまいました。幸い妻の退職金で住宅ローンが完済できたので負債はゼロです。新NISAを利用して老後資金づくりを始めることにしました。
夫は、定年後は再雇用で働きます。65歳までは年収380万円、さらに延長して70歳までは年収270万円で働く予定です。
夫の年金は、65歳から180万円です。退職一時金はありませんが、企業年金は60歳から70歳までの10年間の有期で年60万円受け取れます。
妻は60歳で仕事を辞めようと思いましたが、老後資金が準備できていないため、65歳までは働くことにしました。年収は360万円で、年金は65歳から夫と同様に180万円を受け取る予定です。
60歳から65歳までの世帯収入は、夫の給与380万円、夫の企業年金60万円、妻の給与360万円で800万円です。一方で年間の生活費は2人で480万円です。収支は320万円のプラスになります。
この資金から、もしものときの貯蓄として年間100万円、老後資金として新NISAの積立投資に年間220万円を振り向けることします。60歳を迎えていることもあり、リスクの大きい運用は向いていないので、新NISAの利回りは年2%を想定します。
65歳から70歳までの収入は夫の給与270万円のみになりますが、夫婦合わせて360万円の年金を受け取れます。夫の企業年金60万円もあります。480万円の生活費を差し引いても家計は210万円のプラスとなります。新NISAの積立を180万円に減額し、万が一の貯蓄も30万円に減額します。
その結果、70歳の時点で約2660万円のお金が貯まります。ここから年金だけの収入になるので、老後資金の取り崩しが始まります。