株式の時代から商品(コモディティ)の時代へ

【ロジャーズ】多くの人には投資対象としてなじみがないかもしれませんが、商品(コモディティ)には原油やガソリンなどのエネルギー、金や銀などの貴金属、トウモロコシや大豆などの穀物といったものがあります。それらすべてが投資対象となっています。

私は長い間、商品に注目して投資を続けてきました。長期的に見て、商品ほど儲かっている資産は少ないからです。

今は相関状態ですが、基本的に株式と商品の相場は、逆相関の関係があります。つまり、株式が上昇するときには商品が下がり、商品が上がるときには株式が下がる、といったように、逆に動きます。そして、約18年サイクルで両者の優位性が入れ替わります。

私は世界のインフレが再加速する可能性があると見ていますので、ポートフォリオには、ある程度の商品を組み入れておくのもいいと考えています。

商品への投資は以前よりも簡単にチャレンジできるようになっています。商品関連のETFやインデックスファンドを利用すれば、個人でも気軽に投資ができます。大きなリスクをとらなくても、商品相場の上昇を自身の資産に取り入れることができるようになっているので、もし商品に興味があるなら、あなたのポートフォリオに組み込んでもいいでしょう。ただし、私が言ったからではなく、あくまでもあなたがその商品に詳しくて、興味があればの話です。

【渡邉美樹・ワタミ会長(以下、渡邉)】仮に円の暴落が現実になった場合、目安として私は1ドル=300円を想定していますが、そのときには、日本の優良株も暴落します。そのタイミングで日本株を買う。不動産も下がるはずですから底で拾う。

その時点で「アメリカの国債3分の1、日本株3分の1、日本の不動産3分の1」のポートフォリオにします。おそらく、このオペレーションによって資産を守ることはできるというのが私の考え方です。

【ロジャーズ】私も渡邉会長の考えに似ています。私はいずれ大不況がくると予測していますが、そのときには、世界中が安全資産と考えるドルが、さらに買われるでしょう。

ただ、私自身はドルを安全資産だと思っているわけではありません。世界の金融市場が「ドルが安全資産だ」と考えているため、危機の際にドルの価格はより上昇するはずです。だから私もドルを保有しているのです。そしてドルがバブルの水準に達したらドルを売るタイミングですから、売らなければなりません。そのとき、私にドルを売る勇気があることを願っていますが、ドルを売って、何を買えばいいのか私にはまだわかりません。

私が今いちばん心配しているのはインフレです。インフレが続くと、金や銀の価格が上がっていきます。一方で金利が高くなるので、不動産や株式の価値は下がります。全面的な資産安になってしまうことを懸念しています。

【渡邉】世界恐慌になった際も、ドルが強くなると考えていますか。

【ロジャーズ】世界恐慌がきたとき、投資家たちは安全だと思っているドルに群がると考えています。そのときにドルはバブルになるかもしれません。ただ、一つ警告しておきたいのは、歴史的に見てもアメリカはどの国よりも借金が増えています。借金が多い国ですから、ドルは絶対的に安全な通貨とは言えません。