笠置シヅ子をモデルにしたドラマ「ブギウギ」(NHK)が3月29日で最終回を迎える。ライターの田幸和歌子さんは「笠置シヅ子や同時代を生きた芸能人の生涯を調べると、肉親のために献身的に生きた人が多い。敗戦後の苦境の中、人々を歌で勇気づけた笠置が、歌手を辞めたあとも女優として活動し、娘を育てた」という――。

「ブギウギ」最終週はスズ子と羽鳥の師弟関係が描かれた

朝ドラとして親しまれた「ブギウギ」最終週となる第26週では、「オールスター男女歌合戦」を大トリとして堂々と務め上げた福来スズ子(趣里)の「ブギの女王」復活が、華々しく報じられる。しかし、スズ子はある決意を胸に、作曲家・羽鳥善一(草彅剛)のもとに向かう。その決意とは、歌手を引退することだった。

スズ子と二人三脚で歩んできた羽鳥は絶縁宣言し、引退に猛反対のマネージャー・タケシ(三浦りょう太)は家を出て行ってしまうが、それでもスズ子の決意は揺るがない。一方、茨田りつ子(菊地凛子)はスズ子が引退を決意するに至った思いに真摯しんしに耳を傾ける。

羽鳥との絶縁が心に引っかかっていたものの、スズ子は引退会見にのぞむ。絶縁状態になってしまった二人だが、スズ子はりつ子に、羽鳥は妻・麻里(市川実和子)に、きちんと向き合うよう言われ、苦楽を共にしてきた師弟が話し合いを持つのだった。

ドラマは序盤からラストに至るまで、スズ子にとっての名パートナー・羽鳥と、ライバルであり親友・りつ子の3人組がメインとして描かれた。そして、最終週はまさに師弟の物語が主軸だった。

服部は笠置と出会ったとき、その「別格感」に魅せられた

羽鳥のモデルとなった服部良一は、スズ子のモデル・笠置シヅ子の第一印象を自伝『ぼくの音楽人生』(日本文芸社)で「薬びんをぶらさげ、トラホーム病みのように目をショボショボさせた小柄の女性がやってくる。裏町の子守女か出前町の女の子のようだ」とし、その夜の『クイン・イザベラ』の舞台稽古を見た驚きを次のように記していた。

「三センチほどもある長い付けまつげの下の目はバッチリ輝き、ぼくが棒をふるオーケストラにぴたりと乗って、『オドッレ、踊ッれ』と掛け声を入れながら、激しく歌い踊る。その動きの派手さとスイング感は、他の少女歌劇出身の女の子とは別格の感で、なるほど、これが世間で騒いでいた歌手かと、納得した」
服部良一『ぼくの音楽人生』(日本文芸社)

また、少女歌劇に入った笠置は、踊りでは世に出られないと見切りをつけ、声楽へ転向。松竹楽劇団に入るため上京し、服部と出会うが、当初はソプラノの高い声で歌っていたところ、スイングは地声でなければいけないという服部の持論により、地声で歌うようになったことから、歌手として成功する。

服部良一
服部良一(写真=PD-Japan-oldphoto/Wikimedia Commons