「1日30品目」に根拠はない

――共働き世帯が増えてきて、仕事から帰宅してすぐに夕食の準備に取り掛かる人も珍しくありません。「子どもにはきちんとした食事を提供したい」と考える親・保護者は多いと思います。ただよく言われる「1日30品目」は、食事を用意する親にとってかなり高いハードルなのですが、やはり理想的にはそこを目指すべきなのでしょうか?

【成田さん】「1日30品目」はもともと、1985年に当時の厚生省(現在の厚生労働省)が出した『食生活指針』に言及があって、世間に広まってきたものですね。だから現在の子育て世代の頭の中には強くこれが残っていると思います。ただ2000年に出された食生活指針では、なくなっているんですよ、この文句。

――えっ、そうなんですか?

【成田さん】はい。でもみんな印象が深くって、「1日30品目」ってお題目のように唱えているんですけど。今の子どもはそのようには教わっていないんですよ。

――では、今の子どもには特に具体的に「何品目」ということはないんでしょうか?

【成田さん】ないですね。「バランスの取れた食事をしよう」と。

――なぜ「1日30品目」は『食生活指針』からなくなったのでしょうか?

【成田さん】当時は「食育」といった言葉もなく、ご飯、漬物、味噌汁で完結するような質素な食卓で、それを「バランスよく栄養を取るためにもっとバラエティに富んだものにしよう」という狙いから、キャッチーな文句として「1日30品目」と打ち出されました。しかし「30」という数字に根拠はゼロなんです。

――そうなんですか⁉ ひどい!

肉じゃが、納豆、おひたし、漬物、味噌汁とごはん
写真=iStock.com/kuppa_rock
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「1日30品目の呪縛」から解き放たれてもいい

【成田さん】はい、でも具体的な「30」という数字があったから広まった(広まりやすかった)という事実もあるわけで。

かくして各家庭の食卓は狙い通りバラエティに富んだものとなったので、「30」にこだわるのはもはや誤解を招くだけとなりますし、廃止になったと。これが主な理由だと思います。

それと今の時代に「1日30品目」がそぐわないという面もあります。野菜ジュースを飲んで「この野菜ジュースに入っている8品目を今日はもうクリアした」と満足してしまうのがいいのか悪いのか……というのもあるので。

だから、「1日30品目」の話をする時は「その呪縛からはもう解き放たれていいですよ」とお伝えしています。