気持ちを切り替えて充実した日々に
気持ちを切り替えてからの渡辺さんは「毎日がハッピーだった」と振り返る。
ある時期から、空いている時間を活用して、妻の市議活動を裏方として支え始めた。妻が県議に当選した後は、より前面に出てサポートするようになり、政務調査費の会計作業や日程管理を担当する秘書業務を担った。地方議員には公費で人件費を負担する公設秘書制度がないため、妻からの支出で月三万円の収入を得た。収入がゼロの専業主夫ではなく、収入がある兼業主夫に転じ、ストレスを抱えることもなく、充実した日々を送っていた。
「○○ちゃんのパパは、何で仕事してないの」の一言
とは言え、昼夜とも妻を支え、子どもを育てるというライフスタイルをどう見られているのか、周囲の視線が気になることはなかったのだろうか。
具体的なエピソードが、二つ挙げられます。一つ目は、県議選に落選した後、久々に再会した高齢の男性支援者から、こんなことを言われました。「いつまで遊んでんだ」と。双子が生まれて、主夫になった時です。妻の仕事を手伝っていたので、ショックでしたね。「こっちは遊んでねえんだけど」っていう思いです。
もう一つは、長女が四歳か五歳の頃でした。延長保育がある幼稚園に入れていたんですが、その日は延長ができず、午後二時に迎えに行きました。長女は、いつもより帰りが早いこともあり、「パパ、友達とお庭で遊んでから帰りたい」と言うので、「いいよ」と応じて、園庭で遊ぶのを見ながら、遊び終わるのを待っていました。
平日の午後二時、園庭にいた男性は渡辺さんだけで、他は女性ばかり。話し相手もいないため、園庭の隅っこで、ずっと新聞を読んでいた。
子どもははっきりと口にするので、自分がどう見られているかが分かってしまう。片や、迎えに来ていたママたちは、口にこそしないものの、何を考えているかは分からない。
「仕事はどうしているのか、とか言われてるんじゃないか」と、視線が気になって仕方がなかった。