「私はあなたと子どものツーショットを撮っているけれど、あなたにも時々でいいから撮影してほしい」。妻にそう言われ、いやいやながらおざなりの写真しか撮っていなかった夫に、妻は「もう別れたい」と思わず口にしてしまった……。モラハラ・DV加害者変容に取り組む当事者団体「GADHA」の代表を務める中川瑛さんは「これは単なる写真撮影の頻度だけの話ではない。実はこのケースの夫は、『自分の損得しか考えていない』ために、パートナーは真剣に別れを考えてしまったのだろう」という――。(第2回/全3回)

※本稿は、中川瑛『孤独になることば、人と生きることば』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

カメラを持つ女性のイメージ
写真=iStock.com/west
※写真はイメージです

自分のことしか考えられない人

夫婦、パートナーシップにおいて「自分のことしか考えられない人」の事例を見てみましょう。

ある男性が、パートナーに「子どもとの思い出をたくさん残しておきたいから写真をたくさん残したいの。遊ぶだけじゃなくて、記録を残せないかな? 私はあなたと子どものツーショットを結構撮ってるんだけど、あなたにも時々でいいから撮影してほしいんだよね」と言われました。

男性は「はいはい、わかったよ」と生返事をしながら結局相手に言われるときだけいやいや撮影し、撮影する意欲も低いので、綺麗に撮影することも特になく、適当に撮ったことがわかる写真ばかり残していました。

表情がちゃんと写っていないとか、半目の写真ばっかりだとか、髪型がぐしゃぐしゃなときに限って撮っているとか、食べているものが写っていないとか、記念日のプレートが写真に入っていないなど、パートナーにとってはせっかくの思い出を振り返ることができず、悲しい思いをしていました。

痺れを切らしたパートナー

一方で、パートナーはこの男性と子どもの写真をいろいろ撮影していました。テーマパークで楽しそうに一緒にアイスを食べている写真や、二人で手を繋いで歩いている後ろ姿、髪型が風で乱れていたらさっと直して、後から振り返ったときに「これはいい写真だね」と男性も喜ぶ写真です。このような状況が続いているうちに、とうとうパートナーが痺れを切らし始めました。

「子どもが小さくて可愛いうちに、たくさん振り返れる思い出が欲しいって言ってるよね。あなたもそれを楽しんでる。それなのに、あなたは私が頼むときにしか写真を撮影してくれないし、それもいやいややってるだけ。何度もお願いして、そのたびにその時だけ反省したふりをして、結局自分から写真を撮ることってほとんどないよね。私はそれがすごく悲しい」と言います。

男性は観念してようやく言語化をしました。