バリバリ働く妻に抱いた悔しい気持ち
家父長制思想に染まっていた心中には、「女たるもの、洗濯も掃除も料理もパーフェクトにやるべきだし、それをやるのが女だ」という考え方がすっかり根付いていた。
外で市議の仕事をこなす妻に対し、渡辺さんは家の中での家事・育児が生活の中心だ。男は外で稼ぎ、家族を養うものとする固定観念を持っていたという現実を突き付けられた。
妻はバリバリ、まさにバリバリ働いてました。議会やら視察やら、閉会中審査も頻繁にあり、家のことどころじゃなく忙殺されてました。活躍している妻を横目に、やっぱ悔しくなるわけです。自分も政治家を目指してただけに。で、「俺、何やってんだろう」という自責の念、むしゃくしゃ、自暴自棄ですね。とにかく、もう家族に当たりまくってた時期でした。子どものことで必死だったりもしましたし、家の中が殺伐とし始めたんです。
「俺が変わらなきゃいかん」という覚悟
「パパ、また、怒っているの?」
当時四歳の長女から突然言われたのは、主夫に転じて、一年ほど経ったころだった。
あまりにもムスッとした表情をして、食事をつくっている父親が、台所にいつもいるわけです。子どもたちからしてみれば、そりゃあ、嫌ですよね。
ほぼ同じ頃、妻から手紙を受け取った。渡辺さんが家庭で見せる態度に対し、「あなたが何を考えているのか分からないのが辛い。このままだと、安心して仕事に行けない」と、これまで抱えてきた辛い心情を切々と綴った内容だった。渡辺さんは、自分の態度が、子どもも妻も悲しませているのだと知り、がく然とした。そして、決意を新たにした。
「このままじゃ、ダメだ。俺が変わらなきゃいかん」と覚悟を決めた。
自分が変わらなきゃと思った瞬間、「もう自分はだめだ」みたいなことを考えるのをやめようと決めました。妻が伸び伸びと大活躍することが、もうハッピーなんじゃないかと。で、子どもたちが元気で明るく毎日を過ごしながら、一日一日を歩んでいければ、いいんじゃないかと。そういう風に、頭の中を切り替えられたんですね。それからは、自分がふがいないみたいな感情よりも、「頑張れ」、「いいね」、「ありがとう」みたいな、ポジティブ発想になれたんです。