会社の事情、親の事情
就職の場面で「オヤカク」「オヤオリ」などが増えている背景には、若手人材の奪い合いがあります。
最近の親子は仲がよく、就職活動でも親に相談することが多いようです。親世代の方も、両親ともに「就活」を経験している人が多いので、子どもの就活にアドバイスすることに抵抗がありません。
また企業からすると、少子化で、採用には大きなエネルギーとコストがかかります。最近は親の反対で内定を辞退する学生も多く、優秀な人材に入社してもらうためには、親も巻き込み納得してもらい、少しでも自社への入社を後押ししてほしいという意図が働いていると思います。
ただし、オヤカク、つまり親の太鼓判をもらって入社している場合、職場で何か理不尽なことがあっても、子どもが辞めにくくなる可能性があります。オヤカクが本人の自由な職業選択の足かせにならなければいいなと思っています。
「オヤオリ」を実施している企業の方から、興味深い話を聞いたことがあります。親にアンケートをとって参加理由を聞いたところ、「子どもがブラック企業に入ってメンタルヘルス不調になるなど体調を崩したりすれば、親が経済的に支えていかなくてはいけない。自分たちの老後を考えるだけでも手いっぱいなのに、いつまでも子どもにすねをかじられ続けるのは大変なので、子どもには健康的に長く働ける会社に入ってもらわないと困る」といった理由を挙げる人も多かったそうです。
オリエンに参加するのは、子どものためだけではなく、自分たちのためでもある。これは非常にリアルな視点だと思いました。
少子化や、企業側の事情、親の事情などを考えると、親が子どもの就職や仕事に関わっていくという流れはこれからも広がっていくでしょう。これを前向きにとらえ、若い人たちが健全に働き続けられるように、協力し合うことが必要だと思います。
構成=池田純子
産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。