出てきた意見は一つひとつ叩き落す

「どうして意見一つも言えないの? 普段何も考えないで仕事してるの? いいチームっていうのはちゃんと意見を出して進めていくってことなの。今日全員から意見出るまで会議終わらないからね」と言うと、名指しで意見を求め始めます。まるで誰かがクラスの委員に手をあげないと帰れない学級会のような、重苦しい空気の中で、ぽつりぽつりと意見が出てきます。

その女性は出てきた意見を一つひとつ勢いよく叩き落としていきます。「それはもう前期試してみてダメだったよね? 覚えてないの?」「もうちょっと実現性考えたアイデア出せないの?」「なんでもいいって言っても限度があるでしょ」「はぁ……優秀な人と仕事がしたい」とため息をついて、このチームのダメさ加減にがっかりします。

精いっぱいやっているのに…

次の日、部下の1人が仕事を無断欠勤しました。中途半端に残っていた仕事もあったので何度か電話をしても出ないので、留守番電話には「仕事を投げ出すのは社会人として一番やっちゃいけないこと」と残しました。自分も仕事を投げ出したいときはある。でも、それでもやりきってきたからこそ今の私と立場があると彼女は信じていました。

しかし、その後も部下は出勤せず、しばらくして人事から連絡がありました。部下には精神的な落ち込みがあり、その原因は職場でのストレスであるということで、上長である彼女に事情を聞かれました。

「チームとして成果を出すために、できることをなんでもやっている。最近も意見を出すように何度も促したが口も開けず、ああいう心の弱い人を採用するのもどうかと思いますよ」と、人事に不満を漏らしました。

すると、「最近はハラスメントが問題になっているので、女性であってもパワハラには気をつけてください」と言われ、驚いて「正しいことを言っているだけでパワハラになるなんて、ハラスメントハラスメントって本当にあるんですね。今の女性であっても、って発言は逆にセクハラじゃないですか?」と言い返しました。

自分は精いっぱいやっているのに、部下は会社に来なくなって引き継ぎトラブルも発生しているというのに、さらに自分が責められるなんて、こんなに頑張っているのになんて仕打ちを受けたのだ……と傷つき、怒り、反撃するのです。

このようなことが何度か続き、チームのメンバーの退職や休職が相次ぎ、彼女の評価はどんどん下がっていき、左遷されました。職場での立場を失い、職場の友人にも距離を取られ、イライラからパートナーとの関係も悪化し、最終的には休職することになりました。

パソコンで資料を作成するイメージ
写真=iStock.com/SARINYAPINNGAM
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