ひと声ものを申す権利
政治学では、決め事と自分の関係について、次のような前提で人間のカタマリを運営することを「民主政治(デモクラシー)」と呼んでいる。
人は、自分の生活や人生に直接・間接に影響を与えるような決め事がなされる時には、それに対して直接・間接にひと声ものを申す権利を持っている。
裏から言えば、「人は、自分の生活や人生に影響を与えるような決め事が、自分の知らないところでなされたときには、その決め事には従わないという態度をとっていい」ということだ。アメリカの偉大なる、これまた僕の心の師匠の政治学者ロバート・ダールという人はそう言っている。
やはり決め事は、自分たちでやらないと、「人に言うことを聞かせられる」感が残ってしまう。注意しないとあたかも「自分たちは『促しただけ』で、校則の廃止については、教員・生徒・保護者が集まって相談して、みんなで決めたことですから」というタテマエだけがアリバイにされて、実際は「役所が上から通知を出す」みたいなやり方をされてしまうことだってあるのだ。
1962年東京都生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了。専修大学法学部教授。民主主義の社会的諸条件に注目し、現代日本の言語・教育・スポーツ等をめぐる状況に関心を持つ。著書に『なぜリベラルは敗け続けるのか』(集英社インターナショナル)、『ええ、政治ですが、それが何か?』(明石書店)などがある。