最後に総合的に判断をして、投資バランスを考える

さて、通園用の送迎バスの事故防止に役立ち得る3社を比較してきました。三者三様であり、また各項目によっても優劣に差がある事が分かりました。これらを総合的に判断して、投資優先順位を決めていきましょう。

業績面では、三洋貿易とエッチ・ケー・エスが優位でした。

バリュエーション面では、配当利回りでは、三洋貿易とRYODENでしたが、PBRではエッチ・ケー・エスが優位でした。

財務面では、エッチ・ケー・エスの健全性が際立ち、またRYODENがキャッシュリッチで安定度がある一方、三洋貿易は現金同等物に比較して借金がやや多めと注意が必要なうえ、営業CFでも留意すべき点がありました。

また、定性面では、三洋貿易とエッチ・ケー・エスに、送迎バス置き去り防止事業の本気度が感じられる結果となりました。

ここで、最後に時価総額を確認しましょう。時価総額は、その会社の株式の株価を全て合計したものです。原則、株価×発行済み株式数で計算します。

この時価総額は、いわば市場における当該企業の「値段」と言っても良いもので、時価総額が大きい銘柄を「大型」といい、小さい銘柄を「中小型」などと言います。目安としては、大型が5000億円以上、中型が300億~5000億円、小型が300億円以下、のイメージです。

経験則から言うと、より小型の銘柄の方がリスクは大きい反面、株価の成長余地も高くなる傾向があります。テンバガーといわれる10倍株は、基本的には小型の銘柄から生まれてきます。

当原稿執筆時の2023年11月10日時点の各社の時価総額は、三洋貿易が369億円、エッチ・ケー・エスは32億円、RYODENは570億円であり、三洋貿易は小型から中型の間ぐらい、エッチ・ケー・エスは超小型の部類で、逆にRYODENは中型の銘柄です。その意味で、前者2社の方が株価の成長余地は大きいと言えるでしょう。

総合的に見て、成長性に加え送迎バス事業への本気度、そして時価総額の大きさから見た今後の株価の成長余地を踏まえれば、三洋貿易は十分主軸における銘柄だと思われます。

ただし、財務面では留意すべき点があるため、このリスクをカウンター的にカバーする意味で、脇役としてRYODENを合わせて持つ意味はあるでしょう。特にRYODENは高配当かつキャッシュリッチであり安定度が非常に高く、ディフェンスの役割を十分担う事ができるでしょう。

一方、エッチ・ケー・エスはまだ時価総額が極端に小さく、超小型株の分類で今後の成長が確かなものとなるかどうかは、まだ様子を見ても良いかもしれません。しかし、送迎バス事業への本気度は極めて高く、財務健全性も良好で、ひとたび業績が上振れするようなことがあれば今後の株価成長余地も大きい意味では、ひょっとして化けるかもしれないダークホース的な存在として一口投資しておくのも面白いと思います。

瀧澤 信(たきざわ・しん)
複眼経済塾取締役シニアESGアナリスト

Second Baptist Middle School卒(米国)、渋谷教育学園幕張高校卒、成蹊大学経済学部経済学科卒。明治生命、グッドバンカー(日本初のESG専門投資顧問)、野村證券を経て、サステイナブル・インベスターを2006年に起業、代表取締役社長就任(現任)。2016年より複眼経済塾株式会社取締役シニアESGアナリスト兼事務局長。琉球大学講師(2007)、清泉女子大学講師(2019~)。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。