なだめようとする行為は火に油を注ぐ
顧客や取引先がカスハラ行動に出たときは、どのように対応したらいいのでしょうか。
まず大切なことは、「話を聞く」という姿勢を見せることです。
相手は頭に血が上り、言いたいことが整理されていない状態で、興奮状態にあります。そこでこちらが「ちょっと落ち着いてください」「大声を出さないでください」と言うと、「自分の主張をまともに受け止めていない」「全然話を聞こうとしない」と感じて、余計に興奮してしまいます。こうした相手をなだめようとする行為は、「落ち着け」「静かにしろ」「黙れ」という“指図”と受け止められ、火に油を注ぐことになります。
それよりは「話を聞きますよ」と伝え、まず相手に、言いたいことを全部吐き出せることです。相手は被害者意識、自己愛、自己顕示欲などが強いわけですから、存在を無視したり邪険に扱ったりしないことが大事です。「尊重されている」「話を聞いてもらえている」と感じてもらわないと、状況は悪化するばかりです。
「人」「場所」「時間」を変える
そのうえで、次は「人」「場所」「時間」の3つを変えることを考えてください。これは、現場で対応する従業員個人では難しいので、ぜひ、会社としてマニュアルに明記し、チームで対応できるようにしてください。
カスハラの被害に遭った従業員は、「自分がお客さんを怒らせて、会社に迷惑をかけてしまった」という罪悪感、あるいは、「自分のミスでこんなことになってしまい、うまく対応できなければ能力が低いと思われるかもしれない」という不安感を持っています。このため、「なるべく周りを巻き込まず、自分だけで場をおさめたい」「大ごとにしたくないと」思う傾向があります。
しかし、従業員1人だけでカスハラをしている人の怒りを収めたりすることは非常に困難です。結局、その従業員は深く傷つくことになりますし、周りの従業員も「もし自分がカスハラに遭ったときに、1人で対応できるだろうか」という不安を抱えることになります。ですから、会社としては、自分1人で対応せず、チームで対応することが正しい行動であると、マニュアルで示してほしいのです。
具体的に、対応方法をご説明しましょう。
●「人」を変える
まず、対応する「人」をどんどん変えていきます。
大声で怒鳴られたり、罵声を浴びたりするのは、15分が限界です。それ以上になると、精神的なダメージが大きく、なかなか回復できません。15分経ったら次の上司にバトンタッチしていきます。
見方を変えると、15分話を聞いても相手を落ち着かせることができなければ、それはもう「交代したほうがいい」というサインですから、「上のものに代わりますね」と言って退きましょう。