このタイプの人は、社会的な地位が高かったり、権力やお金を持っていたりする人が多いといわれています。自己愛が強い人は、自分の自信を持ち、信念を持って突き進むタイプの人も多いので、仕事の成果につながるのでしょう。しかし、それで成果が上がると、さらに自信をつけて、いっそう自己愛が強まり、こうしたカスハラ行動につながる可能性があります。

③自己顕示欲の強い人

カスハラ行動をする人の中には、プライドが高く、強いこだわりを持っており、周りにもそう見てほしいと思っている、自己顕示欲の強いタイプの人もいます。

たとえばレストランにカップルで来ていて、店員さんに威圧的でえらそうな口調で当たる男性などは、このタイプにあてはまる可能性があります。男性がこうした行動をとることを嫌う女性も多いのですが、男性の側は「強くて男らしいと思われたい」「みんなが言いにくいことでも萎縮せずに言えている自分を、すごいと思ってほしい」という気持ちから、こうした行動をしてしまいます。

②の、自己愛が強い人と似たところもありますが、こうしたタイプの人も、店や企業に理不尽なことを要求し、それを押し通すことで「自分は特別扱いをされている」ところを周りに見せようとしたり、自分の強さや地位の高さを誇示しようとするのです。

現場の従業員に任せきりでは対応できない

カスハラの根本的な原因は、客と従業員のいびつな関係にあります。両者の関係は、最近はかなり対等になりつつあるものの、まだまだ「従業員が高いホスピタリティを持って、お客さまを扱うのが当たり前」という風潮があります。また、客側としても、丁寧に接客されないと違和感を持つことがあります。

このようないびつな関係がひずみを生み、パワハラと同様に、「力を持っている」とされる人が、「力が弱い」とされる人に対して、理不尽で不快な言動を行い、カスハラが生まれてしまうのです。

これは、個人の資質やスキルの問題ではなく、二者の関係性の問題なので、現場の従業員だけでの対応は困難です。企業全体で対策を取ることが必須です。

私が産業医を務める多くの企業でも、カスハラに対するマニュアル作成に力を入れるところが増えています。会社として、カスハラのリスクを認識してきているからでしょう。

従業員がカスハラを受けると、本人のメンタルヘルスにも悪影響を及ぼしますし、カスハラを受けている従業員を目撃する周りの従業員にも悪影響は広がります。カスハラの加害者は執拗なので、職場の生産性も下がってしまいます。また、それを放置すると、「あの会社は客に怒鳴られても従業員を守らない」という評判がSNSなどであっという間に広がり、求人等にも苦労することになります。

きちんと対応しないと大きなリスクにつながることを、会社も理解しているのです。

ただ一方で、まだ会社として対応できていない、現場の従業員に任せきりになっているところも多いと感じています。

面と向かって指をさし怒りをぶつけてくる男性
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