顧客や取引先から理不尽な要求や不当な言いがかり、暴言を吐かれるなどの「カスタマーハラスメント(カスハラ)」を受けたときは、どうしたらいいのか。産業医で精神科医の井上智介さんは「カスハラは、現場の従業員だけで対応するのは難しいので、会社全体で対策を取るべき。対応にはコツがあるので、あらかじめマニュアルを作成して周知を徹底しておいてほしい」という――。
暗いところで指さし怒声をあげる男性
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カスハラする人の3つのタイプ

スーパーやドラッグストアの店員に延々と文句をいう人、レストランの従業員、タクシーの運転手に高圧的な態度をとる人、取引先に無理難題を押しつけるクライアント……。今やいたるところで、客の側が執拗しつように不平や不満を言い続けたり、理不尽な主張を繰り返す、カスタマーハラスメント、「カスハラ」を目にします。

特に最近は電子化が進み、ポイントカードがアプリになってうまく登録できない、セルフレジの使い方がわからないなどでストレスがたまっているのか、店側のちょっとした手違いや説明不足、環境システムの変化に対して不満が爆発し、その矛先が従業員に向くケースも多いようです。

店や企業側の手違いや説明不足に対して、不満を伝えたり説明を求めたりすることは、誰にでもありますが、それがエスカレートしてカスハラになってしまうのはなぜでしょうか。

カスハラをしやすい人のタイプには、大きく次の3つがあります。

①被害者意識の強い人

「自分は常に差別的な扱いを受けている」と感じている、被害者意識の強い人は、ささいなことでも激昂して相手を攻撃する傾向があります。

こういったタイプの人は、たとえば、スーパーの店員さんがポイントをつけ忘れるというミスをした場合、「わざとやったのではないか」「自分に嫌がらせをしているんじゃないか」という発想になってしまいます。何かいやなことが起こると、相手が自分に悪意を持っているから、そういった行為に及んでいるのだと受け止めてしまうのです。

②偏った自己愛がある人

自己愛が強く、何かあっても「自分が絶対に正しい」「誤りは相手にある」と受け止め、執拗に相手を責めて自分の主張や要求を押し通そうとする人もいます。

たとえば、期限が切れているのに気付かずに割引のクーポンを使おうとして、店員に「期限切れなので使えません」と言われても、「期限がこんなに小さい字で書いてあったらわかるわけがないじゃないか。こんな書き方をしているそっちが悪い」「1日過ぎているくらいいいではないか。割引きを適用しろ」などの、理不尽な要求をしてくる。交換期限が過ぎた商品を、無理やり返品しようとする。自分の要求が通らないと、何回もコールセンターに電話したり、SNSに投稿したりする。こういったカスハラ行動に出てしまう人です。