そもそも大阪には過去に作られた万博記念公園などがある

万博の定義をひも解いてみると、「国際博覧会条約」というものがあり、外務省のHPにはその定義が記されている。

いわく、「博覧会とは、名称のいかんを問わず、公衆の教育を主たる目的とする催しであって、文明の必要とするものに応ずるために人類が利用することのできる手段又は人類の活動の一若もしくは二以上の部門において達成された進歩もしくはそれらの部門における将来の展望を示すものをいう」つまり、その目的は第一義に「公衆の教育を目的とする催し」ということである。

ならば、その催しは一定の規模をもった公共性の高い場所でおこなえばいいということである。

大阪には前回の万博開催地である万博記念公園はじめ、多くの万博開催を可能にする公共緑地が存在する。そもそも、万博期間は半年程度とされ、パビリオンは仮設建築でかまわない。

1970年に日本万国博覧会が開かれた万博記念公園、太陽の塔
写真=iStock.com/kuremo
1970年に日本万国博覧会が開かれた万博記念公園、太陽の塔(※写真はイメージです)

既存の公園にパビリオンを建てるという逆転の発想が必要

ならば既存のインフラもあり建設のための空地をもった公開緑地を活用すれば、パビリオン建設前での準備工事がいらなくなる。吹田の万博記念公園だけでなく、服部緑地、花博を開催した鶴見緑地、大阪城公園、中之島公園、長居公園、ほしだ園地、蜻蛉池公園、みさき公園など、多くの既存の緑地公園が存在する。それらを活用すれば、今夢洲で抱えている問題の大多数は解決するはずなのだ。

万博の無事開催のためには、この際、IRと万博は切り離して考えなおすことが必須である。

現在の夢洲では木造リングと広場の「大阪万博夢洲会場」にとどめ、他のパビリオンやイベントは大阪府全体の緑地帯に会場を分散設置し、会場を巡るための公共交通機関無料パスを発行、大阪中にある飲食店や商店街をも巻き込んだ、大阪という都市全体を巡る日本の文化として生きた博覧会として、参加各国の誰もが満喫できるような万博にすれば、むしろ起死回生となるはずなのだ。それこそ大阪で開催する大義となるであろう。

森山 高至(もりやま・たかし)
建築エコノミスト

1級建築士。1965年生まれ。岡山県井原市出身。岡山県立井原高から早大理工学部建築学科に進学し、88年に卒業。斎藤裕建築研究所を経て、91年にアルス・ノヴァを設立し、代表に就任。04年に早大政治経済学部大学院経済学修士課程を修了。長崎県の大村市協定強建替え基本計画策定など、公共建設物のコンサルティングに携わるほか、マンガの原作などの仕事も手掛ける。主な著書に『「非常識な建築業界 「どや建築」という病』がある。