万博の華であるパビリオンの建設がまだ始まっていない
その各国パビリオンの建設が遅れているどころか、まだ始まっていないという。普段われわれが目にする街の工事現場の進捗を考えれば、「着工から1年ほどであっという間に建っている、まだ2年あるではないか」と思われるかもしれない。しかし、建設行為は目に見える工事現場の作業だけではなく、その前の設計デザインや法務対応、許可申請、材料調達、材料加工、工場での部材の組み立て、運搬、現場作業、完成検査、設備やインテリアの設置、といった流れで、工事前後にもさまざまな工程が控えており、現場工事が1年で進むように見えて、実はその1年前から作業開始していなければならない。
それを裏付けるように、スーパーゼネコン清水建設の代表取締役会長で日本建設業連合会の会長でもある宮本洋一氏から本年8月に以下のような悲痛な叫びが発信されている。
「正直に申し上げて、いま図面をもらっても、間に合うかわからないくらいですよ。万博は2025年4月開幕なので、その年の1月か2月には完成させないといけない。あと1年半しかないんです」
これは、「設計図をもらっても、許認可や素材手配にも通常ならば、1年近くかかるため、実際の工事期間が1年を切っている」という意味だと受け取れるのだ。
「今からでは開催に間に合わない」というゼネコンの悲鳴
さらに、通常の建築ではなく、万博パビリオンという性格から、各国を代表するデザイナーが、創意工夫にあふれた斬新な造形を模索し、最新の素材や未来を見越した提案を設計に盛り込むため、ひとつひとつの建築の難易度が高くなりがち、通常以上に準備や工事作業が掛かってしまうのが必須だからである。それを見越して、建設会社は「早く設計図を見せてほしい、そこから難易度や仕様を調べて、工事金額の見込みを立てたい」と言っているのである。
つまり、現時点で各国パビリオンの設計が明らかになっていないということは、工事費用はまだまだこれから増える可能性があるのだ。その後、韓国とチェコとルクセンブルグの申請がなされたといわれるが、現在もその手続きは数カ国にとどまっている。
現時点で大阪・関西万博の問題は予算が見えない、会場建設のめどが立たないという2つの大きな問題を抱えたままなのである。端的にいえば、大阪万博が抱える問題は「建設の見込みが立たず、予算と工期が見えない」ということに集約される。
なぜ、このような場所を選んでしまったのか?
それは、IR誘致に万博を利用したからに他ならない。