カジノを含む統合型リゾート施設を誘致しようとしたが…

万博会場に隣接するエリアでは、2030年にIRの開業が予定されている。このIR誘致には、大阪だけでなく、長崎、和歌山、横浜といくつかの日本の都市が候補地として手を挙げていた。IR(Integrated Resort)とはカジノを含む統合型リゾート施設という意味だが、世界中から富裕層を呼び込むためのカジノ施設を施設規模の3%と上限を設けたために、一定規模のカジノ施設のために逆算で大型の施設全体規模を設定する必要があった。

さらには賭博性を伴うということで反対運動や環境への影響を受けにくい、一般の居住エリアや商業ゾーンから隔離可能な空間を想定したことから、市街地から一定の距離がありながらも利便性の高いエリアを模索した結果、大阪では臨海の人工島である「夢洲」を候補地にしたものだ。

おそらく、決定権者が大阪の地図を広げ「使われていない、周囲になにもない土地」を指示しただけだと思われるが、その時点で未活用な土地なのは、「まだ完成した埋め立て地になっていなかったから」という認識が抜けていたのではないか。その場所をIR候補地に選んだうえに、万博誘致で上書きできれば、さらにイメージアップにもつながると、机上で都合よく考えたのかもしれない。

土地を貸すだけのつもりが、インフラ整備もするはめに

当初のIR誘致の条件には、大阪市は土地を貸すだけでIR事業者にインフラ整備も押し付け、税収を使わずして街づくりを行うことを夢想していたようだが、事態は思わぬ方向に動き始めていった。世界中を席巻したコロナ禍の影響で、世界中で多くのプロジェクトが頓挫し国際間移動も困難になった。その影響で、大阪IRに進出予定の事業者の多くが辞退することとなり、MGMリゾーツ・インターナショナル(オリックス・関西地元企業等20社の出資)のみが候補として残っただけである。

結果として当初の目論見であったIR事業者によるインフラ整備は、ほごになっただけでなく、進出条件の中に土地活用の利便性の保障や地盤対策なども押し付けられたカタチとなり、また、条件が整わない場合には契約破棄も可能な特約を付けられてしまっているのである。

IR誘致と万博の抱き合わせが、完全に裏目となっており、本来ならIRのためのインフラに万博が乗っかるはずのものが、万博開催のためにまず、IRの分も含めたインフラ工事や地盤改良工事も先行しなければいけない羽目に陥っている。

では、そうすればよいのか?

それは、万国博覧会とはいったい何なのか? という原点に返ればおのずと見えてくる。