「女性は理数系が苦手」というわけではない

理工系、とりわけ機械・電気通信(俗に機電系)で、女性が少ないという問題が、産業界でも悩みの種になっています。令和4年の学校基本調査から女学生割合を出すと、機械は6.1%、電気通信でも9.5%に留まります。

世界的に見ても、大学での機電系専攻は女性が少ないのですが、日本は際立っています。機電系を含む工学部の女性比率を見ると、多くの国は2~3割に対して、日本は12から13%程度であり、半分程度です。

「日本の女性は、数学や科学が苦手だから」

こんな声が聞こえてきそうなので、世界各国の学習習熟度を比較するPSAの点数で男女を比べてみました。

日本の数学の点数(2015年)は7カ国中2位と上々で、男性の平均が539点、女性の平均が530点。確かに男性優位ですが、それは100点満点換算で0.9点という微差に留まります。科学も同様で総合2位、男性平均が545点、女性平均が532点で、こちらは100点満点換算で1.3点です。

黒板に数式を書いていく女性
写真=iStock.com/GCShutter
※写真はイメージです

理系に進むような上位10%の平均点で見ても、数学は男性652点:女性632点、科学は男性665点:女性644点。どちらも差は開きますが、それでも100点満点換算で2点程度。この数字を見てどう思いますか?

「研究室での狭苦しい上下関係、ともするとアカハラが苦手なのだろう」

確かにそうかもしれません。ただ、それこそ、先ほどの営業の話と同じで、正すべき「悪慣習」でしょう。

理工系学部に「女性枠」を

何度も言いますが、50:50にすべきとは思っていません。他国並みの2~3割くらいにはなるということです。そうすることで、気づかない悪慣習が淘汰とうたされ、よりより研究環境にもなるでしょう。

そのためには、上位大学の入試で、女性比率が著しく低い専攻分野に、優遇枠を設けていくのも一案だと考えています。

こんな感じで、男女比に偏りがありすぎる領域に、片っ端からアファーマティブアクション(優遇策)を取ることを提案します。「あれは女がやる仕事」「男なのによくあんな仕事を」なんて言われなくなるころ、ようやく昭和の結婚観も消滅するのではないでしょうか。

海老原 嗣生(えびはら・つぐお)
雇用ジャーナリスト

1964年生まれ。大手メーカーを経て、リクルート人材センター(現リクルートエージェント)入社。広告制作、新規事業企画、人事制度設計などに携わった後、リクルートワークス研究所へ出向、「Works」編集長に。専門は、人材マネジメント、経営マネジメント論など。2008年に、HRコンサルティング会社、ニッチモを立ち上げ、 代表取締役に就任。リクルートエージェント社フェローとして、同社発行の人事・経営誌「HRmics」の編集長を務める。週刊「モーニング」(講談社)に連載され、ドラマ化もされた(テレビ朝日系)漫画、『エンゼルバンク』の“カリスマ転職代理人、海老沢康生”のモデル。著書に『雇用の常識「本当に見えるウソ」』、『面接の10分前、1日前、1週間前にやるべきこと』(ともにプレジデント社)、『学歴の耐えられない軽さ』『課長になったらクビにはならない』(ともに朝日新聞出版)、『「若者はかわいそう」論のウソ』(扶桑社新書)などがある。