日本の家電はなぜ中国、韓国に喰われたのか

図表3の二つのランキングを見比べると、なぜ日の丸電機メーカーが衰退したかの理由が見えてくる。

2021年の順位を見ると、意外な事実が浮かび上がってくるのだ。欧米のメーカーは、日本のメーカーと違ってしっかり頑張っているということである。

家電の分野で、日本のメーカーは軒並み苦戦しているが、それは中国、韓国の台頭が主要因だとされてきた。だから、世界全体の家電市場を見渡したときも同様に、中国、韓国のメーカーに席巻されているようなイメージを抱く方も多いだろう。

だが、実は、そうではない。

欧米のメーカーは、2002年にはランキング10位までに3社しか入っていなかったが、2021年には4社が入っている。むしろ、日本のメーカーに席巻されていた1990年代ごろと比べれば、シェアは伸びているのだ。

2002年に10位以内に入っていたアメリカのワールプール、スウェーデンのエレクトロラックスは、いずれも2021年で10位以内に入っている。オランダのフィリップスははずれたが、新たにドイツのBSH、フランスのSEBグループがランクインしている。5社もあった日本のメーカーがパナソニック1社になってしまったのとは対照的である。

つまりは、この20年の世界の家電シェアは、「中国、韓国のメーカーが台頭した」のではなく、「日本のメーカーが凋落した」と見るほうが正しい。

なぜ欧米の電機メーカーは生き残ることができて、日本の電機メーカーは衰退しているのだろうか?

ここに、日本経済衰退の大きな要因が秘められているのだ。

主力商品を見れば衰退の要因がわかる

各メーカーの主力商品を見ればその理由は見えてくる。

欧米の電機メーカーは、中国や韓国のメーカーとは、あまり競合していないのだ。

五星紅旗と太極旗
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アメリカのワールプールは、冷蔵庫や洗濯機などの「白モノ家電」が主要商品である。だが、ワールプールの扱う商品は、アメリカ式の大型製品がほとんどであり、業務用も多い。

中国の電機メーカーがつくる白モノ家電とは、ちょっと分野が異なるのである。

またスウェーデンのエレクトロラックスも、白モノ家電が主要商品だが、食器洗浄機、調理器具など、キッチン周りの製品が多い。そして、デザイン性に優れ、家電としてだけではなく「家具」として高級感のある品揃えが特徴となっている。

ドイツのBSH、オランダのフィリップス、フランスのSEBグループなども同様に、アジア系の電機メーカーとは、若干、主力商品が違っている。

しかし、日本の電機メーカーの主力商品と、中国、韓国の電機メーカーの主力商品は、まともにかぶっている。冷蔵庫、洗濯機等の白モノ家電は、同じくらいのサイズのものであり、その他の家電にしても同じような商品が多い。