未婚女性に残る「昭和観」は決して本人の責任ではない

こうしたデータを集めて、「だから女性も高望みせず、学歴や年収が自分より下の男性を選べ!」と短絡的なことを言うつもりはありません。

その前に、なぜ、こんな「昭和」が女性の心に根付いているのかをしっかり考えて、社会を変えていくことが先決でしょう。

まず、女性を取り巻く環境。それがいまだに「昭和的結婚観」の大合唱なこと。たとえば、付き合っている男性が、パートタイマーやアルバイトだった場合、多くの親御さんは、渋い顔をするのではないでしょうか。

いい大学を出て、有名企業に勤める女性が無名企業の低年収な男性と付き合っていたら、同窓生も会社の同僚も、興味本位に「なんで彼を選んだの」と聞くでしょう。決して貶めるつもりはなくとも、こうした「常識的発言」が彼女をどんなに傷つけるか。

加えて言えば、マスコミでは、「非正規男性だから結婚できない」「低年収の男はもてない」と大合唱しています。

これでは、本人も洗脳されるでしょうし、意思をもって愛を貫いても途中で心折れるでしょう。つまり、女性本人だけの問題ではなく、周囲の存在が大きい。マスコミも含めて、そのことに気づいてほしいところです。

ウエディングケーキの上の新郎新婦のミニチュア人形
写真=iStock.com/mofles
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「稼ぎも家事も育児も女性持ち」では結婚する意味がない

そしてもう一つ。やはり、家事育児の不公平という問題があります。

たとえば、大企業のエリート男性でも、派遣で働くかわいくて気の利いた女性と結婚するケースは多々見受けます。私のいたリクルート社では、役員や執行役員、部長クラスの男性社員の奥様が、自部署に来ていた派遣社員というケースは枚挙に暇がありません。

なぜ、男は非正規で低年収の女性を娶るのか。昭和的常識以外にも、「結婚すれば、奥さんに家事や育児を任せられる」という頭がある。非正規社員なら、総合職エリートより仕事が忙しくないから、家庭内はまかせっきりにできる!と。つまり、やはり相応のメリットがあるからこれは成り立ちます。

一方、エリートで高年収の女性はどうでしょうか? まず、周りに気の利くかわいい男性派遣社員は皆無です。そもそも出会う機会すらありません。仮に、どこかの店舗で働くアルバイトの男性と知り合ったとして、結婚したら彼が、家事育児の大半をしてくれたりするでしょうか。ともすると、収入も家事育児労働も、全て女性の負担になりがちです。これでは結婚する意味など見いだせないでしょう。

つまり、やはり、女性本人ではなく、生活環境までしっかり変えていかなければ、女性の心から「昭和」はなかなか消え去らないといえそうです。

海老原 嗣生(えびはら・つぐお)
雇用ジャーナリスト

1964年生まれ。大手メーカーを経て、リクルート人材センター(現リクルートエージェント)入社。広告制作、新規事業企画、人事制度設計などに携わった後、リクルートワークス研究所へ出向、「Works」編集長に。専門は、人材マネジメント、経営マネジメント論など。2008年に、HRコンサルティング会社、ニッチモを立ち上げ、 代表取締役に就任。リクルートエージェント社フェローとして、同社発行の人事・経営誌「HRmics」の編集長を務める。週刊「モーニング」(講談社)に連載され、ドラマ化もされた(テレビ朝日系)漫画、『エンゼルバンク』の“カリスマ転職代理人、海老沢康生”のモデル。著書に『雇用の常識「本当に見えるウソ」』、『面接の10分前、1日前、1週間前にやるべきこと』(ともにプレジデント社)、『学歴の耐えられない軽さ』『課長になったらクビにはならない』(ともに朝日新聞出版)、『「若者はかわいそう」論のウソ』(扶桑社新書)などがある。