男も女も、自分の人生を謳歌したい
思い出してほしいのは、「北風と太陽」の寓話。旅人は温かい太陽の日差しを受けて、コートを脱いだのです。
いま一度、この100年の歴史を振り返ってください。出産にまつわる話は、まず第一に、為政者の思惑がいつもそこにありました。会社の思惑も広い意味ではここに入るでしょう。続いて社会システム上の有利不利という視点が、多くの場合女性識者からここに加えられます。キャリアとの両立などもその典型でしょう。こちらは「女性の味方」の顔つきをしている分、その本質になかなか気づけません。
ただ、女性たちは(もちろん男性たちもそうであるように)、為政者や社会システムとは関係なく、自分の人生を謳歌したいだけなのです。その一番の欲求に干渉してくる言説には、論理で反駁できなくとも、体の奥底で抗ってしまうのでしょう。
かつて、旧優生保護法下やハンセン病患者隔離策において、今から見ればありえない不妊施術が、当時は普通に行われていました。私たちは同じ目で、現代をも見直さなければならないでしょう。
今、話しているその言葉は、女性を道具にしていませんか。
彼女らの気持ちを萎ませていませんか。
20年後の人たちから嗤われることはありませんか。
1964年生まれ。大手メーカーを経て、リクルート人材センター(現リクルートエージェント)入社。広告制作、新規事業企画、人事制度設計などに携わった後、リクルートワークス研究所へ出向、「Works」編集長に。専門は、人材マネジメント、経営マネジメント論など。2008年に、HRコンサルティング会社、ニッチモを立ち上げ、 代表取締役に就任。リクルートエージェント社フェローとして、同社発行の人事・経営誌「HRmics」の編集長を務める。週刊「モーニング」(講談社)に連載され、ドラマ化もされた(テレビ朝日系)漫画、『エンゼルバンク』の“カリスマ転職代理人、海老沢康生”のモデル。ヒューマネージ顧問。著書に『雇用の常識「本当に見えるウソ」』、『面接の10分前、1日前、1週間前にやるべきこと』(ともにプレジデント社)、『学歴の耐えられない軽さ』『課長になったらクビにはならない』(ともに朝日新聞出版)、『「若者はかわいそう」論のウソ』(扶桑社新書)などがある。