勝間和代さんも「時代の常識」を謳った
同じような早婚と、キャリアの充実をすすめた識者がもう一人います。あの有名な、経済評論家の勝間和代さんです。
勝間さんは結婚のメリットを以下のように説明します。
① 二人で暮らすことで、家賃や公共料金など、生活の固定費が切り下げられる。
② 産まれた子供へ投資することで、その成長した子供が恩返しをし、精神的かつ経済的リターンをもたらしてくれる。
③ 男性より収入が低くなりがちな女性にとって収入が安定するなど生活保障をもたらす。
④ 子育てを通じ男女ともに社会的成長ができる。
⑤ 出産には時間的制約があり、女性が若いほど、妊娠・着床率は高い。
よって、「私たちに一番大切なのは時間です。だからこそ、結婚による果実を、なるべく早めに得られる早婚を推奨します」(毎日新聞2009年5月3日付)。
確かに、勝間さん自身が学生時代に結婚し、21歳で長女、25歳で次女、31歳で三女をもうけています。
この早婚志向を後押しするような制度を打ち出す企業も現れました。衛生用品大手のユニ・チャームが2014年に導入した「Fresh-Mom Recruitment」がそれで、妊娠・出産予定がある女性が同社の新卒採用選考を通って内定を得た場合、最長30歳まで、入社時期を遅らせることが可能。早くに結婚し子どもをもうけ、育児が一段落した頃、キャリアをスタートさせることができるという制度です。
同社はこの制度の目的を「出産・育児による就業制限が一段落した環境の下で業務に取り組むことで、短期間での成長が期待できる。一例として、35歳で自身のドメインとなる専門性を身に付け、発揮してもらうキャリアモデル」の創設だとしていました。
「早婚推奨」に女性たちが抱く違和感
女性の味方であるはずのユニ・チャーム社までもが、なぜ、女性にのみ「人生を急げ」と十字架を背負わすのでしょうか。
こうした早婚推奨がなされるたび、私は多くの女性たちから反発の声を聞きました。早婚主張者の「スマート」で「教条的」な言葉に、上から目線を否応なく感じていたのでしょう。そして、「仕事やキャリアに役立つ」「産業社会に貢献できる」「成長できる」といった、話者の価値観に行きつく。人生はその道具へと堕してしまう……。
別に人生はキャリアのためにあるわけではなく、人は社会に貢献するために子どもを産むのでもありません。エレン・ケイにしても、勝間さんにしても、同時代のスターであったことは疑いようがありません。ただ、同時に彼女らは、時代の社会環境を代弁するトークン・ウーマンでしかなかったともいえるのではないでしょうか。