最適な清掃技術を自分で見つけるという仕事上の喜び

ここでも、仕事の意味づけが重要な役割を果たしていると考えられる。新津氏にとって清掃とは、空港を自分の家のように清潔に保つことであり、赤ちゃんまで含めたお客様に快適に過ごしてもらうことを目的とする仕事なのだ。ここまでこだわって清掃するプロがいるからこそ、羽田空港は世界一清潔な空港として評価されるのだろう。

新型コロナの影響で行き交う人の少ない羽田空港
写真=iStock.com/Stossi mammot
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この事例では、もうひとつ注目する点がある。それは新津氏が清掃を工夫する理由に、自己の成長の喜びがあることだ。書籍の中で新津氏は、仕事をひとつひとつ覚えていくことが純粋に楽しいと語っている。適切な清掃技術は、時代や床材の変化でも変わる。それに対して、自分なりの安全な手順、工夫を考え、課題をクリアしていくことが楽しいというのだ。

新津氏の場合、清掃という仕事を全体的で有機的なものであり、かつ個人の成長に資するものと捉えている点で、ジョブ・クラフティングの好事例といえよう。

仕事の意味を考えさせられるレンガ職人の例え話

個人にとって、仕事の意味は部分か全体かという話に関してを考えると、レンガ職人のエピソードを思い出した読者もいるのではないだろうか。

このエピソードの概要は次のとおりだ。旅人が3人のレンガ職人に会う。そして、それぞれのレンガ職人は、旅人に仕事をする(レンガを積んでいる)理由を述べる。

1人目は、ただやむなく目の前のレンガを積んでいるだけで、それ以上の理由はない。
2人目は、家族を養いお金を得るためにレンガを積んでいる。
3人目は、歴史に残る大聖堂をつくるためにレンガを積んでいる。

1人目と2人目のレンガ職人は、やむを得ず、しぶしぶレンガを積んでいる。しかし3人目のレンガ職人には大聖堂という夢があるので、いきいきとレンガを積んでいる。できるなら、3人目のレンガ職人のように働こうというエピソードだ。これはたしかに、仕事の意味でいえば、1人目と2人目のレンガ職人は部分的であり、3人目のレンガ職人は全体的ということになろう。