「女性から簡単に仕事を取り上げる」という深刻な問題

最後になりましたが、広末さんが世でいう不倫をしたからといって、兵糧攻めにして、彼女のなりわいであり収入源である演技の仕事(テレビや映画など)を取り上げるというのは深刻な問題です。

一般の会社でも男性と女性が不倫をしてバレた場合、女性に対する風当たりのほうが厳しく、女性が解雇をされることがあります。なんだかんだと理由を付けて女性から仕事を取り上げるのは「ジェンダーの平等」がうたわれるご時勢に合わないと考えます。

広末の相手のように男性は当然のように仕事を続ける

鳥羽さんを責めるわけではありませんが、鳥羽さんは6月18日のTBSの番組「サンデージャポン」に「(騒動を受けて)自分が、世の中に出来ることは何かと考えましたが、やはり料理しかありませんでした。少しずつでも失った信用を取り戻せるよう、改めてゼロから料理に向き合い、努力を重ねて参ります」というコメントを寄せており、彼自身も、また世間も「同氏が仕事を自粛すべき」とは考えていないようです。

もちろん芸能人とシェフという業種の違いも関係しているのでしょう。それにしてもこれから離婚に進むと思われる広末さんは、それが実現すればシングルマザーとなるわけです。食べ盛りの子供が3人いる女性から仕事を取り上げて関係者は良心の呵責かしゃくを感じないのでしょうか。

「不倫」という言い方自体、私は好きではありません。一体いつの時代の価値観なのかと思います。それがどのような恋愛であるか、純愛であるか否かは当人同士が決めること。広末さんの手紙を見ていると純愛のような気もしてきました。

サンドラ・ヘフェリン(Sandra Haefelin)
著述家・コラムニスト

ドイツ・ミュンヘン出身。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「ハーフ」にまつわる問題に興味を持ち、「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。著書に『体育会系 日本を蝕む病』(光文社新書)、『なぜ外国人女性は前髪を作らないのか』(中央公論新社)、『ほんとうの多様性についての話をしよう』(旬報社)など。新刊に『ドイツの女性はヒールを履かない~無理しない、ストレスから自由になる生き方』(自由国民社)がある。 ホームページ「ハーフを考えよう!