“ベンチ寝パパ”が消えていた

そして、あくまで私の個人的な印象ではありますが、ここ数年は、公園に連れてきた子どもを放ったらかして、自分はベンチでガッツリ寝始めるパパなんて見なくなりました。パパたちも全員、しっかり子どもの隣に寄り添って、安全を見張りながら遊びのサポートをしています。

本当に変わった……‼ とひそかに感動してしまう。

ちょっと前までは「イクメン」とわざわざ呼んでみたりしないと、パパが育児に“参加”することの違和感とのバランスがとれなかったのに、今はそんな言葉すら廃れている。私たち育児世代が子どもの頃は、「お父さんは家事育児をしなくて当たり前」な世の中だった。

そんな親世代を見てきたから仕方ないことだけど、男たちの間で「ママと同じくらい一生懸命に子どもの世話をするのはなんだか気恥ずかしい」という感覚があったんじゃないかと思います。

でも近年、徐々に「それって変じゃないか? それじゃやっていけないよね?」と思う心に従って、一人ひとりが変化した結果、社会全体が「男も母親と同じレベルで父親として子どもの世話にガッツリ向き合っていいんだ」という目覚めに到達した、そんな感じがすごくします。

女たちの訴えが山を動かした、とも言えるし、男たちが素直になったとも。

これはものすごい上達だと思うし、もっともっと、みんなでお祝いしてもいいくらいのことだと思います。褒めたたえたい。

そう考えると、あの「ベンチ寝パパ」がたくさんいた光景は「男の照れ隠し」の要素も大いにあったのかもしれない、と思ったりもするのでした。

“プール寝パパ”に知ってほしいこと

そして公園ベンチ寝パパはすっかり見なくなった令和時代ですが、遊園地などのプールに行くと、地面で水着姿で大の字で寝ているパパをたくさん見るのです。

炎天下、タオルを体にかけているとかでもなく、海パン一丁で地面にドーンと大の字になり、いびきをかいて寝ているパパたち。これまた1人や2人ではありません。

水着姿で大の字で寝ているママはいない。うーん、ジェンダーギャップ。

プールサイドで大の字で寝ているパパ
イラスト=田房永子

プールの場合は、付き添いがいない子どもは水に入ることが許されていないところが多く、子どもだけで遊んでいると監視員に注意されます。

だから私はプールでは、大の字パパがいても、その子がどこにいるかはあまり気になりません。監視員が見てくれてるし、さすがに1人でプールに連れてきて子ども放ったらかしで寝るパパはいないだろう、と思っているからです。

時代が変わっても、すかさず寝るパパたち、男という性。

寝パパ達よ、寝るな、という話ではない。

ただ「自分が平気であれば海パンから何かが見えそうな状態であっても人前で大の字になりしっかりした睡眠をとることが“許されやすい”性別であり、もう片方の性別はそれができない・することを許されていない。そういう空気がまだまだ令和にもある」という意識はできたら持っていてほしい。

そんな願望が私にはあります。

田房 永子(たぶさ・えいこ)
漫画家

1978年東京都生まれ。2001年第3回アックスマンガ新人賞佳作受賞(青林工藝舎)。母からの過干渉に悩み、その確執と葛藤を描いたコミックエッセイ『母がしんどい』(KADOKAWA/中経出版)を2012年に刊行、ベストセラーとなる。ほかの主な著書に『キレる私をやめたい』(竹書房)、『お母さんみたいな母親にはなりたくないのに』(河出書房新社)、『しんどい母から逃げる!!』(小学館)などがある。