自分の得意分野に集中するのがベスト

もし、「こうしたツールを使ってはいけない。まず基本的な漢字の知識を身につけるべし」となったら、途方もない時間を漢字の勉強に費やさなくてはいけません。しかし時間は有限ですから、「漢字を勉強する時間」と「仕事をしたり、考えたりする時間」がトレードオフになってしまいます。

ならば、苦手とする漢字はAIに助けてもらって、自分が得意なこと、たとえばテクノロジーに関連した研究、投資、教育などに集中できたほうがいい。それが自分にとって、もっといえば社会にとってもベストな選択といえるのではないか、と思います。

しかし、もし日本語ネイティブでない人が、日本の書に魅せられて「書家になりたい」と思い立ったら、たとえ膨大な時間がかかろうとも漢字を勉強しなくてはいけないでしょう。

パソコンで翻訳の作業をする人
写真=iStock.com/gesrey
※写真はイメージです

もう1つ例を挙げます。日本の多くの学校では、授業で、計算機を使ってはいけないようですが、社会に出てから、複雑な計算を自分の手で筆算しなくてはいけない局面など、おそらく一般的には皆無です。

だったら、最初から計算はテクノロジーにやってもらったうえで、別のところを伸ばしたほうがいい。でも、もし数学者を目指すのなら、ホワイトボードが数式でいっぱいになるくらい、自分の手で筆算ができなくてはいけません。

その他、僕が最近習っている茶道の作法や、インストラクターを務めているスキューバダイビングなどは、自分の体で体得することに意味があるものです。しかし、世の中に存在する学びのすべてが自分で体得する必要があるわけではありません。

ならば、学びに関する様々な「作業」にツールを用いるのは非常に有効だと僕は思います。